令和7年度 科学研究費助成事業(科研費) 令和7年度 採択課題 研究概要②

金属間相互作用の自在操作に基づく発光性クロミック金属錯体の創製

研究代表者氏名 加藤 昌子
(カトウ マサコ)
所属 教育学部
教育学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(B) 研究課題番号 23K23366

研究の目的

 平面形の分子構造をもつ白金(II)錯体は、制癌剤、触媒、有機ELの発光材料など、機能性物質として、ますます活発に研究・開発が進められている。白金(II)錯体のもう一つの注目すべき特性として、錯体分子が単独では発光しなくても、積層することで特有の強い発光を示す集積体が生じることである。この特有の発光(集積発光)は、白金錯体が重なって白金イオンどうしが近接するとことにより、新たな電子状態が形成されることに基づく。従って、積層構造をコントロールすることにより、発光色を様々に変えることができると期待できる。しかし、一般的に結晶中では、分子は安定な状態で配置するため、発光色を自在に変えることは困難であった。本研究では、蒸気雰囲気や弱い機械的刺激などの環境要因により、発光色が様々に変わる白金錯体の構築を目指す。また、金属イオンの種類をかえて、白金と同じ電子配置をもつパラジウムも用いて、電子的な制御を試みる。本研究で合成した金属錯体の発光特性や結晶構造を明らかにして、金属間相互作用の本質に迫り、強発光かつ刺激応答を示す発光性物質の創製を目指す。

期待される研究成果

 配位子の置換基を入れ替えた一連の白金錯体を合成することで、赤色から青色まで多彩な発光色を示す結晶の構築に成功した。また、これらの白金錯体は、通常の光励起によるフォトルミネッセンス(PL)だけでなく、擦るなどの機械的刺激で暗闇でも発光する応力発光(トリボルミネッセンス,TL)が見出され、擦ることにより発光色が変わるクロミックTLを実現した。さらに、フレキシブルな置換基の導入により、単一の錯体において、水蒸気やメタノールなどの特定の蒸気刺激に応答して色をかえる、フルカラーの発光を誘起することにも成功した。一方で、結晶内で白金(II)錯体とパラジウム(II)錯体の混合比率を制御することで、発光色制御のみならず強発光化が可能となることを見出した。本研究では、結晶の中で金属間相互作用に着目して、強発光を維持したままで発光色を自在に変換できる系を実現し、構造化学的、分光学的に重要な知見を得ることができた。この点において、本研究は高い学術的意義を有するとともに、柔軟で高秩序な応答系であるソフトクリスタルとして、今後、環境応答性発光材料、センシング、光プローブ材料等への応用展開が期待できる。

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https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-23K23366
※国立情報学研究所の科研費データベースへリンクします。

光化学

研究代表者氏名 加藤 昌子
(カトウ マサコ)
所属 教育学部
教育学科
職位 教授
研究種目 研究成果公開促進費「データベース」 研究課題番号 25HP8014

研究の目的

 本事業では、光化学協会が定期刊行している協会誌「光化学」(Vol.1(1977)~ Vol.43(2012)、全71冊)のデータベース化を目的とする。協会誌「光化学」は、光化学に関する国内唯一の機関誌として、2024年現在、冊子は全55巻に及んでおり、科学的かつ教育的価値の高い貴重な記事(論文)が蓄積されている。環境やエネルギーの観点からも、光化学・光技術の重要性とさらなる発展が求められる中、これまで蓄積された基盤的な知識や技術の共有化の要請はますます高まっている。光化学協会の事業として、Vol.44(2013年)以降の記事のオンライン化を行ったが、さらに、2012年以前の資料のデータベース化が急がれる状況にある。本計画では、これらを科学技術振興機構の電子ジャーナルプラットフォーム「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」においてアーカイブ化し、世界中の光化学及び関連分野の研究者が利用できるように無料で公開する。

期待される研究成果

 J-STAGEにおける協会誌「光化学」の全論文のアーカイブ化により、データ国内外の光化学研究者のみならず、学生や若手研究者、および周辺分野の研究者が、光化学に関する研究の本質を知ることができる貴重な資料に容易にアクセスすることが可能になる。従って、本計画で完成する「光化学」は、有用な科学遺産へのリビジットにより科学研究のさらなる発展を促すデータベースとして高い意義をもつとともに、国内、国外での学術的利用が期待される。