文学部 日本学科 講師
齋藤 鮎子 先生
Ayuko Saito

四天王寺大学にサウナと旅が好きで、黒猫と縞三毛猫に支配された生活を送るちょっと変わった先生がいるらしい。しかも、かつてはベンチプレス大会に出場した経験まであるようだ。そんな先生が研究しているのが、文化地理学。2022年に高校で地理が必修化されたとはいえ、大学で学ぶ文化や地理学がどんなものなのか。そこで「現地に出かけて研究をするのが好き」という齋藤先生に文化地理学の魅力について聞いてみた。

日本や世界のご当地グルメはどこから生まれて、なぜその地域に定着し、どこまで広がっているのだろう?そんな疑問をはじめて抱いたのは大学進学を機に大阪にやってきた時のこと。静岡県出身の私にとって身近な「富士宮やきそば」が大阪ではスタンダードではないことに驚きました。それ以来、「なぜ?」の答えを知りたくて、食文化と地域の関連について研究を続けています。
なかでも私が研究しているのは、東アジアの粉食文化。大学院時代からは中国・日本の餃子、ベトナムのライスヌードルとライスペーパーについて研究してきました。ベトナムの社会主義体制下では、まちなかでフィールドワークを無許可でしていると公安に捕まってしまう可能性もある、研究者泣かせの国です。
※米や小麦などの穀物を粉にして食べる文化

そこで、現地の学生として研究に取り組むほうが許可されやすいと考え、ベトナムの大学院に1年間留学することにしました。公安や地元の役場へ研究内容を申請してから、ライスヌードルやライスペーパーを作っている村を調査してきました。ベトナムには、ひとつの村でひとつのものを徹底的に作る「専業村」というものがあり、ライスペーパーの村では全世帯の80%以上がこれを作り生計を立てているのです。彼らがどんな生活をしているのか、その実態を追った1年間は大変貴重な経験で、今ではベトナムが私の第二の故郷になっています。

「地理学=地図の勉強」というイメージを持たれがちですが、実は地理学の研究対象は地表面にあるすべての事象です。地理学者は「ちりも積もれば地理となる」とよく言うのですが、地域には自然環境、歴史、文化、人口、経済など様々な要素が複雑に関連しています。それらの要素をジグソーパズルのように組み立て、総合的に理解することで、地域の構造や本質が見えてくるのです。
また、地理学の重要な研究手法として、現地に足を運び、観察・資料収集・聞き取りなどを行うフィールドワークがあります。旅好きの私にとってフィールドワークが何よりの研究の醍醐味です。

ある時はキャンピングカーに愛猫を乗せ、5日間で長野県を縦断して日本海を通り近畿と中部を一周するフィールドワークに出かけたこともあります。走行距離はなんと約1,300km!日常を忘れて、その場の感覚に身を任せるのは楽しいですよ。もちろん、フィールドワークには難しい面もあり、人と会って話を聞いてもわからないこともあります。それに、新たな事実を発見するとまたひとつ新たな「なぜ?」が生まれるのです。そんなことの繰り返しですが、ひとつひとつを丁寧に理解しながら、現地での人の営みにふれる体験は、本や資料を読み解くだけでは得られない発見を与えてくれます。これが面白くて、どんなに遠い場所にでも実際に現地に行き研究をしています。

文学部 日本学科 講師
齋藤 鮎子 先生
Ayuko Saito
研究分野
文化地理学、地誌学(東アジア)、地理教育、食文化
担当科目
食文化の基礎、郷土と食、現代食文化論

日本食と言えば何を思いつきますか?なぜそこにあるのでしょうか。どこまで広がっているのでしょうか。他の地域との違いはなんでしょうか。日本の食を深く知るためには、他の地域の食についても知らなくてはなりません。食は、様々な事象が複雑に関連しあい、地域固有の食として現れます。わたしの専門とする地理学は、地表面の事象とそれらの相互関係を追究する学問です。地理学的見地から、食と地域の関連を明らかにします。

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