大学基礎演習Ⅱ ゲストスピーカーによる講演を聴きました(その2)
2022年12月16日
社会学科1回生が冬学期に履修している「大学基礎演習Ⅱ」では、11月24日にゲストスピーカーをお招きして講演を聴きました。11月10日の回に続いて2回目です。
今回の講演では、39歳で失明された松永信也さんをお招きし、「見えないこと」や「見えない世界」について学びました。松永さんは現在、日本視覚障害者団体連合同行援護事業所等連絡会の会長や、短期大学、専門学校の非常勤講師をされています。
ご講演のなかでは、まず現在の日本には視覚障がい者が約31万人いること、そのうち全盲の人は3万人、残りの28万人はちゃんと見えない人であり、その「見えない」状態についても、サランラップの棒で向こうを見るような状態の方もいれば、周囲だけが見えない方もいるということを教えて頂きました。また、視覚障がいになる原因には、緑内障、糖尿病性網膜症、そして事故があり、自分自身や友達、家族が当事者になる危険性があることも強調されていました。
その上で、 現在の社会は、あらゆる情報が文字で示されているため、視覚障がい者が情報を得ることが難しいこと、視覚障がい者のなかでも点字を読める人は1割ほどであり(特に年齢を重ねてから視覚障がいになることが多いため)、また点字を学ぶにしても教える人や場所などの学ぶ条件が整っていないと難しいというお話もありました。
松永さんのご講演は、お話だけではありません。実際に、「見えない」ということがどういうことかを体感するために、松永さんの指示の下、最初は目を開けて1分間片足立ちをした後に、今度は目を閉じて1分間片足立ちをしました。目を開けて片足立ちすることは多くの人が出来ましたが、目を閉じて片足立ちを1分間出来たのは10人だけでした(全体の1割ほど)。
この体験を通して、人は目からの情報に左右されていることや、「見えない」ということは身体のバランスが取りにくくなることでもあることを実感しました。
ご講演の後半では、35歳の頃から白く霧がかかったように見える(雲の中を歩くように見える)ようになり景色が歪み出したことや、39歳で失明をした時に歩けなくなり怖くなったこと、その日の内に仕事を辞めたことなど、ご自身の経験についても語られました。また、松永さんが現在利用されている、文字を読み上げるアプリや、ビデオ通話で視覚支援を受けることのできるアプリの機能について、実演を交えながら教えて頂きました。
以上のように、松永さんのご講演は、視覚障がいに関する事実やデータから始まり、ご自身の経験に至るまで多岐にわたる内容でした。最後に、色々な立場の人のことを、イメージではなく、しっかりと知ることが重要であり、そうすることで色んなことが見えてきて、人生が豊かになると学生に語って下さいました。さらには、SDGs(持続可能な開発目標)において強調されているような誰一人取り残さない社会をつくるためには、しっかりと知ることが大切であること、そして、誰もが参加できる未来の社会をつくるのは君たちだとエールを送って下さいました。ご講演の後には、多くの質問が寄せられ、松永さんには丁寧にお答え頂きました。
最後に学生の皆さんの感想を紹介します。
- 今回の講話を聞いて、自分は視覚障がいについてほとんど知らなかったということを実感した。松永さんが、自分も目が見えなくなる前までは視覚障がい者について深く理解していなかったとおっしゃっていて、私も無意識に差別はしていなくとも区別はしていると思った。視覚障がいについて、今回、松永さんのお話を聞くまで知らないことが多かった。だから、今回のお話を聞くことができて、とてもためになったと感じる。私の最寄りの駅でも、たまに白杖を持っている方を見かけることがある。しかし、声をかけていいのか、どのように手伝えばいいのかが分からず、「かわいそうだな、大変そうだな」と思うだけで何もできなかった。今回、実際に視覚障がいのある方からお話をきくことができて、自分も視覚障がいの方を見かけたら積極的に手助けをしていきたいと思った。
- 今回、松永さんのお話を聞いて、可哀想、可愛想のお話で少しはっとするところがありました。私自身、障がいのある人をみて、本当に自然に可哀想だという感情が出てきます。でも、「勝手に自分のものさしで人の人生を可哀想と決めるのは良くない」と言われたことがあり、少し納得しました。でも、気の毒という気持ちをどう拭えばいいのかわからず、もやもやしていました。今回、松永さんの可愛想という言葉や、「嫌いなものやことは人間想像しようともしない、優しくしてあげたいから、愛があるから、可哀想と人間は感じる」という言葉を聞いて私自身が救われました。
- 視覚障がい者のことを知るだけでなく、障がい者のことを知ることは、その人自身を助けるだけでなく、自分たちと障がい者を繋ぐ何かになるのではないかと考えました。誰一人取り残さないような社会を作るために、自分たちに何ができるのかを考える大切な機会になりました。
今回の松永さんのご講演から多くのことを教えて頂きましたが、同時に、多くの「問い」を投げかけられたようにも思います。自分たちが社会の一員として、社会問題をどう捉え、どう関わっていくのか。今後の授業のなかで、さらに学びを深めていきたいと思います。
お忙しいところ講演をお引き受けくださいました
松永さん
どうもありがとうございました!
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