新着任:柏木賀津子教授にインタビュー(後半)



10月に新着任された、柏木賀津子先生にインタビュー形式で尋ねてみました。
引き続き後半です。

前半はこちら↓
https://www.shitennoji.ac.jp/ibu/guide/department/news/edu-tyusyo/guide-41404.html

 

 英語教育の道に進んだきっかけはありますか? 

本格的に英語教育に興味を持ったのは、人生も半ば、スペイン、カナリア諸島に3年間住んだときです(1997年)。最初は、チーズ屋さんや肉屋さんに買い物に行ってはスペイン語を覚えた経験は、今も小学校英語指導に役に立っています。「意味のある場面で、音声から何度も聞いた表現を模倣しながら、友達とやりとりをする」という言葉の学び方は、その後の英語の学び方を大きく変える力を持ちます。

英語教育の道に進んだきっかけは、スペイン語が話せるようになった頃、スペイン人の友人と、大学の英語授業を受けていた時です。先生はイギリスから着任したばかりの英語の教授でした。まず、カナリア諸島の歴史がわかる風景の写真をたくさん持ってきてくれました。“There used to be a cathedral along the bay.”(大聖堂は海沿いにあったんだよ。)と、カナリア諸島の現代の建物と、古い建物の写真を代わるがわる紹介してくれました。私と友人は、壁に貼られたその写真を一つひとつ見てギャラリートークをしました。初めて知るカナリアの地理と歴史でした。その島は、コロンブスがアメリカ大陸を発見するルートで立ち寄った、コロンブスの恋人が住んでいた島でした。その後、教授は、「“used to be~”ってどんなこと?」と問いました。友人も私も口々に、「むかしは~だったんだよね。」「今は無いってこと?」「対比してる。」と意見を言いました。教授は文法の説明は一言もしませんでしたが、生徒の私たちは、深いレベルでその使い方が分かったのです。初めて自分で発見する文法でした。帰りのバスで、スペイン人の友達と、「なんか、こんな英語の講義初めてだね。」と話して次の授業を楽しみにしたことを覚えています。

カナリア諸島の大聖堂写真と“used to be~”

 

「文法って習わなくても気づくことができる!」と意識した瞬間でした。その後、帰国してその英語の指導方法が「Focus on Form(フォーカス・オン・フォーム)」だと分かったのは2年後のことです。大学院で修士・博士と学び、これは、R.Schmidt(1995年)が唱えた「気づき仮説」(外国語の仕組みというものは、気づきがないと習得できない)という理論に基づく教授法だったと行き当たりました。当時、翻訳本はなかったので、必死で英語教授法の原書を読みました。そうこうするうちに、TOEICや英検のスコアがいつの間にか伸びていました。人は、「大事な意味を夢中で学んでいる時」に言葉もしっかり取り込めるのです。

今、わたしの授業は、このFocus on FormやUsage-based Model(用法基盤モデル)で行っています。授業の最初に文法を説明しません。先に意味のあるやりとりを英語で始め、インプットの頻度をあげていきます。すると生徒はある程度、英語の仕組みに気づき始めるので、気づいたことを出してもらってから、文法のスキーマをパワポ等で確認します(帰納法)。この流れは、認知負荷を和らげ、生徒はかなり早めに英語を使えるようになることが実証研究で分かっています。一方、日本語で文法を説明して練習してからだと、生徒はもう間違うチャンスもなく、ペアワークをしても英語が出にくくなるのです。この方法を「文法訳読方式」と言い、クリエィティブに英語を使う時間があまり取れません。2020年からの新学習指導要領はまさに、前者を推しています。Focus on Formが日本の公教育に入るまでに、実に20年以上の月日が流れました。

 

 教員にはどのようなグローバル視野が大切ですか? 

1つ目は、異文化や異なる考えを結び合わせて、イノベーションを起こすデザイン思考力

2つ目は、社会へのアンテナを高く伸ばして、テクノロジーを使って意見交流ができるICT活用力

3つ目は、互いに良さを引き出して協働し、学校やコミュニティに貢献しようとするシチズンシップ

このような力を育むために、英語分野では、教科連携の授業に取り組み、海外の教員との対話の機会を持つようにしています。例えば「和食CLIL:旨味」「防災CLIL:南海トラフに備えよ!」、「黄金比CLIL:美しいデザイン」などの授業について、著書を出版しているので参考にしてください。

フィンランドの大学院生に「Paper Plane」CLIL講義(柏木 2017年)

 

フィンランドで「サイエンス×英語」STEAM授業(学生らと:2019年)

 

 グローバル教育センター長としては、どんな仕事をしていますか? 

iTalkは世界への窓になるスペースです。ネィティブによる英会話クラス、中国やアメリカ合衆国とのオンライン交流、ルワンダとのボランティアプランなど、刺激的な話題に溢れています。ポストコロナに向けて、カナダ海外研修プログラムも準備中です。私自身は、フィンランドでの海外実習を長く手掛けてきたので、その経験も生かしたいと思っています。来年度は、オンラインで教員を招いて「日本と世界のスーパーティーチャーに学ぶ」「グローバルWAアンバサダー」などのプログラムを計画しています。学生にたくさん参加してもらいたいと思っています。

iTalk 四天王寺大学の学生英語プレゼンとユタ州学生とのオンライン交流

 

 学生へ送る一言メッセージ 

「人生の花火は自分で打ち上げよう」

一度しかない人生です。自分の花火を打ちあげて周りの人と一緒に楽しみませんか。

 

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