石原田先生の英語の語源の四方山話:その5



石原田先生の英語の語源の四方山話教中

 

英語の語源の四方山話(Ⅴ):外来の「1」、「2」の場合

 

今回からは英語になった外来の要素、特に接頭辞についてお話します。

外来の要素で英語の語彙を増大させているのは、何と言っても古代ギリシャ語とラテン語です。

それらは中世を通じて学術語であり、特に後者はヨーロッパの国際語として広く使われていました。

そのような事情から、ギリシャ語やラテン語に由来する学術語は現代もなお科学技術の発明や発見に使われています。

今回はまず、「1」と「2」を表す語について考えてみましょう。

 

 

「1」を表すギリシャ語由来の要素には、mono- があります。

これからmonochrome 「モノクロ」(chrome は「色」)、monograph「(単一テーマの)論文」(graph は「書かれたもの」)、monolog(ue)「独白」(-log(ue) は logos「言葉」)、monopoly 「専売」(poly は「売ること」)、monorail「モノレール」、monosyllable「単音節」、monotone 「単調」、monotonous 「単調な」などができています。

 

一方、ラテン語で「1」を意味するunus 由来の uni- からも多くの英語ができています。

unicycle「一輪車」、unify 「統一する」、uniform「制服」、union 「合同、一致」、unique 「唯一の」、unit 「一個、単位」、unite 「合体する」、universal 「世界的な」、universe 「宇宙」、university 「大学」など。Universe は語源的には「ひとつになった」という意味であり、university はさまざまな分野が「ひとつに統合された」という意味でした。「ひとつ」は「ひとしい」のであり、「全体」でもあるのです。

 

 

「2」はギリシャ語・ラテン語ともduoです。「2重唱(奏)」を意味するduoはそのまま英語になっています。

duet [d(j)uét] 「デュエット、2重奏」はイタリア語経由で指小辞が付いた形。

duoはギリシャ語由来ではdi-, dy-「二つの、2倍の」となり、dilemma「(二者択一という)ジレンマ(lemma は「前提」)、dichotomy 「二分法」(tomy は「切断すること」)、dioxide 「二酸化」(oxide はoxygen 「酸素」(化学記号はO)から)、二酸化炭素はcarbon dioxide、そして有毒のdioxin 「ダイオキシン」など。炭素の化学記号であるCはcarbon の略。doubt「疑う、疑念」も duo 由来です。

「2つの選択で迷う」から「疑う」という意味になりました。

duplicate「コピー(する、の)」や duplicity「二枚舌、不誠実」などもdoubt と同じ語源、つまり、double の意味が基盤になっています。

double 「2倍(の、で)」というのは、語源的には two plus ということです。

以下、「3倍」から「10倍」まで順に挙げると、triple, quadruple, quintuple, sextuple, septuple, octuple, nonuple, decupleと続きます。

それをthree times またはthreefold…(中略)…ten times またはtenfold と言ってもいいのです。

これらギリシャ語系のdi- の他に、ラテン語系の bi- もあります。

この発音は「バイ」なので、日本語の「倍」とピッタリ一致します。biathlon 「二種競技」(athlon は「競技」)。

bicycle 「二輪車」(bike はbicycleの短縮形なので、英語では通例自転車のこと)。

bilingual は「2言語使用の(人)」。

billion は語源的にはtwo million、つまりa million millionなので本来的に「1兆」になりますが、現在では慣例として英米とも「10億」を意味します。

combine, combination などの語中の -bin- もbi- と同じ語源であり、「ふたつを一緒にする(こと)」という意味です(com- は「一緒に」という意味)。

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