人文社会学部 日本学科 -最新情報-

「伝える力」を伸ばすために その2——「パフォーマンス実践演習」(後半)

前々回の記事(こちら)に続き、日本学科専門科目「パフォーマンス実践演習」(夏休み中の集中講義)の後半についてご報告します。

集中講義3日目。時間割は2日目に同じく、「身体表現」2コマ、「朗読」1コマ、グループワーク(創作パフォーマンス作り)1コマという構成でした。「身体表現」は、「役になりきる」とは?という先生の問いかけから始まりました。その後は、舞台上での立ち位置を決める練習に取り組みました。流動する場の中で、他の人の位置や動きにも目配りしながら、瞬時に判断して適切に自分の位置を取るという練習です。他者との関係性を適切に捉えつつ、相手に“乗ってみる”試みを繰り返し行いました。自分に対する他者の位置、自分と他者との距離に意識を向けられるようになることは、後で行った“めざす相手に向かって、着実に自分の声を届ける練習”でも生かされました。

次は指定された動き(マイム)を順に一人ずつ行う練習でしたが、前の人よりも、大きく・強く表現することが課せられているので、始めは易しくても、何度も続けているうちにどんどん難しくなっていきます。受講者たちは、自分にできることの限界を痛感し、自分の表現の幅について自覚させられたのではないかと思います。「自分を客観的に見ることが出来る、第三者としての自分を持つ」ことは、冒頭の問題提起「役になりきる」ことにおいて必要なことなのだと教わりました。

続いて、自分がなじんでいるルーティンの動きを人前で再現したり、他の人のそれを見たりして“自分の基準を知り、他の人との相違をも知る”ことに努めた後は、全員で場面や動きを作り上げるエクササイズ数種類に取り組みました。“指定されたテーマの場面を瞬時に全員で作り上げる”エクササイズでは、他の人との物理的な距離や位置を測るだけでなく、テーマにふさわしい構成物を自分が演じるために、他の人の演技との調和まで考えなくてはなりません。これを数秒内で行うという難しい課題に、受講者たちは何度もトライしました。そして最後には全員で“エア大縄跳び”や“エアドッジボール”を行いましたが、全員で作り上げるその動きの中に、大縄やボールが本当に見えるようでした!

「朗読」は、総復習として、これまでに取り組んだ題材(絵本と物語)を、役割分担を決めて朗読しました。「身体表現の練習を生かして、大きな声が出せ、役に入り込めた」「せりふに感情を乗せることができた」「1日目、2日目に比べてキャラクターの声に変化を付けられた」「台本を見ずに演じることができて、少し成長できたのかなと感じた」など、成果や成長を感じた人が多かったようです。

グループワークも、3日目にして大詰めです。各グループは、これまでに自分たちなりに身に付け、表現できるようになったものを「身体表現」および「朗読」の講師の先生方や日本学科教員の前で披露し、アドバイスを受けました。よい所をほめられる一方で、根幹に関わることでシビアな指摘を受けたりもしました。未定の細部もまだ残している状態で、明日の本番に対する不安が募ります。授業時間終了後も居残って、熱心に練習するグループもありました。

いよいよ最終日の4日目は、「ヴォイストレーニング」から始まりました。身体を動かしながらのなかなかハードな発声練習を経て、日本語を構成する母音・子音の発音のポジションを確認。最後に歌唱での実践を行いました。1日目にも歌った童謡ですが、2グループに分かれ、各グループで3番までの歌詞をいかに工夫して歌うか相談し合い、その発表として互いのグループの前で歌いました。「自分の表現したいことは何か」「そのために必要な要素とは?」「身体を意識した表現方法とは」といった、講師の先生からの問題提起は、一人ひとりが考えていくべき課題として、受講者たちの心にとまったことでしょう。

この次の時間に、発表のリハーサルを行いました。今回は、他のグループ(受講者仲間)からの評も寄せられます。素直に出来に感心する声だけでなく、「ここはもっとこうしたら」というアドバイスもたくさん出るのはありがたいです。先生方からも、昨日からの進歩をほめる言葉とともに、もっとできることがあるよ!もっとよくなるはず!という愛の鞭もいただきました。

お昼休憩をはさんで、ついに成果発表会です。日本学科の他の先生方も見学に訪れて見守る中で、各グループは作り上げたパフォーマンス―「他者への理解」あるいは「コミュニケーション」をテーマにしているもの―を実演しました。

全グループの発表後、受講者仲間、先生方が評を述べました。評には、お話作りや表現の工夫はもちろん、ハードな条件下での努力、メンバーの個性や持ち味を巧みに生かしていること、そしてそれをメンバー同士で支え合っているからこそ一つの劇、パフォーマンスとして成功していること、などの指摘と評価が多数挙げられていました。発表者たちも、小さな失敗を悔いたり、力の及ばなかった点を自覚したりする一方で、確かな達成感をも感じていたことでしょう。

最後に、異なるグループの人と「この授業を通して自分がつかんだもの」「コミュニケーションや協働について学んだこと」について話し合い、クラス全体に発表し、全般的な振り返りをポートフォリオに記しました。「目標の実現のために努力したか」「この科目を受けて、自分に変化を感じるか」「この授業で得た力をほかでも応用できると思うか」という設問には、受講者全員が肯定の回答を寄せていました。

 

受講者のみなさん、4時間連続×4日間連続のハードな授業、お疲れ様でした。みなさんが努力と研鑽によって自己の能力を高め、それぞれの「伝える力」を伸ばしたことは素晴らしいことだと思います。この経験から得たものを今後に活かしつつ、まだまだ成長していくことを、期待して見守っています。

 

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