古典文学ゼミの研修合宿



中世日本古典文学を専攻する源ゼミでは、例年、夏休みの時期に研修合宿をおこなっています。

今年度は、夏学期のゼミで、『平家物語』における義経像を共通テーマにしたので、一ノ谷合戦に関わる地として須磨をフィールドワークすることになりました。

一泊二日の一日目は、みっちりと研究発表です。冬学期から取り組むことに決めた卒業研究のテーマを、3年生が順に発表していきます。4年生は、自分自身の経験から、3年生にアドバイスをおこないます。8月末とはいえ、まだまだ夏の雰囲気が残る須磨海岸にある宿泊施設が会場でした。勉強に打ち込む学生たちの傍らの窓には、美しい白砂青松の景色が広がっています。

5時間に及ぶ研究発表を終え、学生たちはお待ちかねの夕食です。発表尽くしから解放され、みなさん、よい表情です。翌朝は、宿の脇にある旧灯台前で記念撮影をして、フィールドワークに出発です。

最初の訪問地は、一ノ谷合戦における義経の奇襲攻撃について、そのイメージを確かめるのに格好の場所、須磨浦公園です。ケーブルで急な斜面を登ると、こうした絶壁を義経一行も駆け下りたのかと想像が膨らみます。鉢伏山上の展望台では、ゼミ委員による解説で皆さん理解を深めます。晴天のおかげで、平家の拠点である屋島まで望むことができました。展望台脇の『平家物語』にちなむ顔出し看板に興じる学生も・・・。

展望台に上り下りする際のレトロな乗り物も、一興。下山した一行は、須磨の海を望む位置に祀られた平敦盛の供養塔を参拝しました。目の前の浜辺で熊谷直実に組み伏せられた敦盛に、一同、思いを馳せました。中学・高校の「国語」教科書でも有名な一場面です。

次の目的地は、敦盛の首塚を祀る須磨寺。敦盛と直実の騎馬武者像が私たちを出迎えてくれました。こちらでもゼミ委員が解説役で大活躍。しばらくの自由散策の間、カラクリ時計に興じる者、義経の腰掛け松をのぞき込む者、一切経蔵を回す者、梵鐘を突く者、宝物殿で敦盛遺愛の青葉の笛に見入る者・・・。『平家物語』の世界に彩られた宗教的聖地のあり方について、学生たちは理解を深めたように思います。

二日間の研修合宿の最後は、須磨寺で解散しました。帰り道は自由行動だったのですが、ゼミ生の何人かは、宿願であった須磨ビーチへ! 裸足で浜辺を駆け巡り、過ぎゆく夏を惜しむ様子でした。

日本学科の学びでは、文学研究についても、机上で終えることはありません。景観によって紡がれる物語、物語から創生される景観。現地に立って、物語の足跡を辿ることで促される思考を大切にしています。

一覧に戻る 学科に戻る