人文社会学部 日本学科 -最新情報-

留学生のスピーチを聴く――留学生は「日本文化」をどのように受け止めたのか

日本学科1年生のほぼ全員が履修する「日本文化論Ⅱ」の最終授業日には、冬学期の間、この授業でともに学んできた中国浙江工商大学からの留学生のうちの3名のスピーチが行われました。

毎年、この授業の最終日には、浙江工商大学からの留学生数名にスピーチをお願いしていますが、今年は、やってみたいと立候補してくれた蕭 建さん、金 廸慶さん、楊 青青さんの3名に、一人12分から15分程度の時間を使ってのスピーチをお願いしました。この科目は、100名以上の学生が履修している科目ですので、大きな教室にほぼいっぱいの学生を前にしてのスピーチです。スピーチをしてくれた留学生の緊張の度合いは、かなり高かったのではないでしょうか。

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それでも、早口になることもなく、ゆっくりとした聞き取りやすい日本語で、しっかりとスピーチをしてくれた3名の留学生には大きな拍手を送りたいと思います。

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留学生たちは、本学と学術交流提携校である浙江工商大学で3年間日本語を専攻し、日本文化についても十分に学んできたとはいっても、実際に日本で生活することが初めてという人もいて、昨年9月以降の留学生活では、さまざまなカルチャーショックも体験したようです。

今回のスピーチでは、そうしたカルチャーショックについて留学生が語る内容を聴くことで、日本学科の学生にとっては、改めて「日本文化」について考える場となりました。

簫さんは、中国で日本での生活を経験した学生の報告を聴いたときに「日本では挨拶が大切なのだ」と思い、来日してから寮の周辺を散歩している時に出会った見ず知らずの人にあいさつをしたら怪訝な顔をされたことや、実際には、大学構内でも学生たちがそれほど挨拶をしていないことを知って、自分はどのように対応したらよいのか迷っていること、「本音と建前」は中国にもあるが、中国人としての自分の価値観では、たとえ建前として発言したことでも相手が本気にすれば、それは本音として実現させなければならないと感じているが、日本ではそのようなことがないことを知って、礼儀正しくあるとはどうあるべきなのか、分からなくなったなどと話しました。

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金さんは、留学先である四天王寺大学の教職員や学生の態度から日本人の責任感の強さを感じたこと、さらには、日本の信号機には目の不自由な人のための音声案内が設置されていることを知って驚いたことからはじめ、買い物をする際の店員のサービスの良さなど、中国で日本が評価されている要因について、実際に体験し、それをどのように感じたのかを紹介しました。

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揚さんは、日本人の礼儀正しさについて紹介しながらも、そうした人に対する思いやりや配慮は、実は、お互いがその場の「決められたルール」を守っている時だけに示されるもので、ルールを守らない人に対しては厳しく対応されるという状況に出会った体験を紹介してくれました。さらに、アルバイト先で、「中国から来ました。研修中」と記された名札をつけることで、「よそもの」とされているのかと感じ、日本ではウチとソトを厳密に区別するのだと思ったことなどについて話しました。

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日本学科の学生たちは、留学生が、留学生活で出会った様々な出来事や人との交流で感じた「なぜ?」という疑問や納得できなかったことについて、しっかりと考え、日本文化について理解することでカルチャーショックを乗り越えようとした体験が、日本語という留学生の母語ではない言葉で、しっかりと語られるのに聴き入っていました

また、それぞれのスピーチが終わるごとに、コメントシートの記入欄に、留学生の感じた疑問に自分なりの説明や答えを書き込むという課題に真剣に取り組んでいました。

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中でも、揚さんの感じた「よそもの」として扱われているのか、という疑問には、日本人学生でも、アルバイトの場合、100時間は研修中という名札を付けるという説明のほか、そのような名札は、排除という気持ちではなく、何かあった時にあなたを守ってあげようという配慮や親切心のあらわれなどだと説明する学生が多くいました

こうして留学生のスピーチを聴くことで、自分の価値観や自分にとっての「当たり前」だけで異文化圏の人々に接することで、思わぬ誤解やコミュニケーションギャップが生じることがきわめて身近な場で起こりうることを実感し、また、それぞれの背景にある文化的環境の相違で、同じ出来事を全く異なる様に受け止めるということが実際にあるのだということを知って、文化的背景を異にする相手、自分とは価値観の異なる相手とのコミュニケーションの場では、どのような「伝え方」が大切なのかを考える時間を持つことが出来ました。

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