平成28年度 採択課題 研究概要

研究代表者氏名 佐藤 美子
(サトウ ヨシコ)
所属 教育学部
教育学科
職位 講師
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 15K00997
研究課題名 考える力の育成を図る実験の個別化と授業実践ー呈色板によるマイクロスケール実験

研究の目的

 実生活に役立つ科学的な思考力・表現力・判断力の育成のための効果的な学習方法として、実験とその後の考察・発表などの言語活動に焦点を当てた学習システムの構築を目的とする。
児童・生徒による一人ひとりの個別実験を可能とする「マイクロスケール実験」は児童・生徒の能動的な活動を促すだけではなく、その実験を自ら行うことで、結果についての実体験を伴った発言を引き出す可能性が高まる。また、器具を小規模化することによって、使用する薬品の量を軽減し、実験時間を短縮させることができる。その結果、限られた時間の中で、考察を行う時間のゆとりを生み出すことが可能となる。
この実験方法を学校現場に伝え、普及させることで実験後の活動への取り組みを喚起したいと考える。実験後の結果発表、結果から気づいたことを話し合い、発表するという言語活動の時間を充実させ、「考える力」の育成を図ることが最終目的である。そのための手段となる実験方法の開発、本研究では特に、「呈色板」を用いた教材開発を中心に実施する。また、言語活動を充実させるための様々な方法として、例えば、ホワイトボードやiPadの用い方、電子黒板の使い方を学ぶこともその一助となると考え、これらのツールを取り入れて言語活動の充実を目指すことにも取り組むものである。

期待される研究成果

 本研究では、実験方法の普及を妨げる理由でもある、器具の購入に関して、より安価で安全な実験器具として、呈色板(1枚40~60 円)を用いた開発と授業実践を繰り返し、改良を重ねることで、最終的には容易に実施可能な実験として流通することを目指している。授業実践は、小・中学校の児童・生徒を対象とするだけではなく、大学生も視野にいれて実践を行う。特に小学校教員志望の学生には、様々な実験を通して、あらためて理科に親しむことの重要性を認識させ、理科を指導することのできる教員を目指して実験を含む授業実践を多く体験させる。色々な実験方法の1 つとして、マイクロスケール実験の有する意義とその手法を学び、将来、教員としてマイクロスケール実験を含む様々な実験を日常的に実施できる技量を備えることが重要であり、そのための研鑽を積む。勤務大学の目指す小学校教員養成とリンクして、明確な目的を持って研究成果を社会に還元したい。
また、マイクロスケール実験の特徴である個別実験を生かした「考える力」の育成を目的とした、教材開発と授業実践を行う。教育現場のICT 化が進む中で、本研究においてもICT 機器を積極的に用いた教材開発と授業実践を行い、授業の新たな展開を提案する。また、開発した器具による実践は、学校教育に限定せず科学館等においても実施し、実践を通し教材器具の運用だけでなく、学生の指導力向上にも役立てたい。

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研究代表者氏名 矢羽野 隆男
(ヤハノ タカオ)
所属 人文社会学部
日本学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 15K02093
研究課題名 近代大阪の在野儒学者の研究―その経学と社会政治活動―

研究の目的

従来〈儒学における西洋学の受容〉の研究対象となるのは、儒学を素養として西洋学を修めた「洋学者」が中心で、また明治期の儒学者を取り上げる研究も、多くは帝国大学など近代教育の中で活動した学者であった。在野の儒学者は対象外に置かれ、彼らが儒学を基礎に西洋学をいかに受容し、どのように活動したかは十分な研究がなされてこなかった。
本研究は、近代大阪を代表する在野の儒学者で、中央にも積極的に働きかけた泊園書院の藤澤南岳、梅清処塾の山本梅崖らを対象に、日本漢学と日中交流史の研究者の共同研究によって、その経学(儒教の経典解釈学)における西洋学の受容、および清末知識人との交流、時事的発言など、経学および社会政治上の活動を多角的に解明してその思想史的意義を考察するものである。

共同研究の分担は下記のとおりである。
A 経学および西洋学受容に関する思想史的考察:矢羽野隆男(研究代表者)
B 社会政治上の活動およびその思想史的考察:呂順長(研究分担者)

期待される研究成果

1.これまで研究対象外であった近代大阪の在野の儒学者を対象とすることで、近代思想史の空白を埋める点に意義がある。彼らは洋学者や官学の学者でないために見落とされた存在であったが、本研究により彼らを近代思想史上に正当に位置づけることができる。
2.近代の儒学者の経学を正面から取り上げる点に新たな研究領域を拓く特色がある。近代思想史における経学研究は極めて手薄で、南岳・梅崖の著作も手付かずである。本研究により、大阪の儒学の経学研究から発展して〈近代儒学における経学〉の領域へ広がる可能性をもつ。
3.国際的な人的交流を示す最新資料の活用により、大阪の儒学者の活動を東アジアを視野に入れた近代思想史において捉える点に先進的かつ普遍的な特色がある。梅崖ら大阪の儒学者と清末知識人・中国人日本留学生との交流記録、政府要路への意見書など最新資料の発掘分析により、近代の日本・中国の動きと連動する活動の思想史的意義の探究が可能となる。

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研究代表者氏名 片野田 浩子
(カタノダ ヒロコ)
所属 教育学部
教育学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 15K02708
研究課題名 脳科学データに基づく英語スピーキング教授法の開発

研究の目的

これまで授業(英語討論・英語プレゼンテーション等)で、スピーキング指導の折、観察した『目を左右に動かす』=“英語発話の促進”←『英語による思考の促進』を仮説としてたてた。本研究の目的はこの仮説を、脳波測定器で科学的に検証し、その結果をスピーキング教授法として確立・発信することである。このストラテジー指導により学習者は、英語による思考が促進されるため英語を継続的に話せる効果が期待され、特に、初心者から中級者、中級者から上級者に移る過渡期で、既習事項に基づき討論やプレゼンの場面で意見や物事の説明を英語で継続的に述べる際に役立ち、英語で授業をする教員を含め、すべての英語学習者の潜在能力を引き出し、力の底上げと日本人のグローバル化に寄与する。

期待される研究成果

研究の期間内に以下①から③のことを明らかにし、④から⑥のような本研究の特色や独創性を通して、⑦から⑨のような研究成果を想定。
①先行研究における脳科学データに基づく英語学習あるいは教授法/学習法の把握。
②仮説:『目を左右に動かす』=“英語発話の促進” ←『英語による思考の促進』を、脳波測定器を使い検証。
③同教授法実践と英語学習者における効果。
④脳科学データに基づくスピーキング教授法であること
⑤実践方法がシンプルですべての学習者に恩恵を与える
⑥英語による思考が促進されるため、継続的に英語が話せる効果が期待されること
⑦学習者:プレゼン等の場面において自分の意見を継続的に英語で述べられるグローバルな発信型人間へと成長
⑧小・中・高の英語教員:英語で英語の授業をする際に有効
⑨スピーキングへの自信:英語の思考を促すため、スピーキングへの自信が育つ

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研究代表者氏名 和田 謙一郎
(ワダ ケンイチロウ)
所属 人文社会学部
人間福祉学科
健康福祉専攻
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 15K03164
研究課題名 療養所入所者からみたハンセン病(らい)法制史

研究の目的

 ハンセン病(らい)が可治となった後の療養所は、その実態は生活の場所に変化していく。本研究の目的は、不治から可治の時代をまたいだ療養所について、医療の発達と「らい法制」改廃が後追いする間にあるタイムラグを検証し、社会復帰を阻害された入所者の生活保障を多面的に検討することにある。それは、生活不安に対応する社会保障法制の進展につながる。入所者は極端に高齢化し、最後に真実を語ろうとする者もいる。わが国の社会保障法制のためにも「入所者からみたハンセン病(らい)法制史」を編むこと、その要請と緊急性から本研究は立案された。
 なお、本研究は「らい予防法」の下での入所者の生活保障を明らかにするために、医療の発達と法令整備の関係を研究するという観点から学際的に「らい予防法」と「入所者の生活歴」にアプローチする。「らい法制」と療養所入所者の生活保障の関係は、「らいの時代」「ジレンマの時代(可治の時代)」「ハンセン病の時代(多剤併用療法による根治の時代)」とに区分し、入所者・退所者や医療者等の立場から解明する。プロミン治療の開始により入所者が治癒に期待を持つ時代になっても、退所規定のない「らい予防法」施行という矛盾の時代が存在した。また、社会復帰を果たす者がいる一方で再入所する者もいた。それらの時代を中心に、当時の「らい法制」の下、ジレンマが多いなかでの入所者の生活を解明していくことになるのである。

期待される研究成果

 ハンセン病(らい)法制に対する入所者の語りと療養所内の一次資料の分析により、不治から可治をまたいだ入所者の生活歴の検証を行うことに、本研究の大きな特徴がある。不治と可治の時代をまたぐ「らい法制」と「入所者の史実」について、多方面から総合的にアプローチした研究は数が少ない。「らい法制」下で療養所生活を送ってきた入所者の史実と照らし合わせて、当時のらい医療と療養所の本質を知る意義は大きいのである。また、判決による法的解決と、入所者の生活歴に対する思いの相違点の発見については、原告となった者、原告にならなかった者すべてについて、ハンセン病(らい)患者・回復者としての生活世界を意識する必要がある。つまり本研究は、療養所生活を選択した者の思いから、判決が必要以上に触れなかった昭和30年代までの「らい法制」の目的、運用・適用と、不治から可治の時代をまたいだ入所者の生活の実態を探り、他方、療養所を疾病を隔離し偏見を助長する源泉と仮定し、療養所と地域の関係に焦点をあてるのである。研究成果としては、わが国の「排除の構造」を解明する可能性について、法的根拠による各施設(重度障害等の施設)を巡る問題等、生活保障との関係において仮に法整備を誤れば、制度的に新たな少数を出現させるという「排除の構造」を解明する社会的な貢献が見込まれる。

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研究代表者氏名 笠原 幸子
(カサハラ サチコ)
所属 人文社会学部
人間福祉学科
健康福祉専攻
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 15K04020
研究課題名 ケアワークにおける高齢者の主体性を支援する研究:自己決定に焦点を当てて

研究の目的

本研究の目的は、①ケアワークにおける主体性を尊重する支援とは何かを明らかにすること、②身体機能や認知機能が低下してくる高齢者の主体性の尊重を具現化することによって、高齢者がどのように変化するのかを明らかにすることである。
 本研究目的を達成するために、社会福祉の実践価値である高齢者の自己決定に焦点を当てる。具体的には、日常生活場面で、高齢者の自己決定実践過程でのケアワーカーの適切な支援を明らかにする。そして、自己決定を経験した高齢者の変化について明らかにする。本研究で得られる知見は、ケアワークの専門性向上に寄与するとともに、高齢者が自分の力を発見し、主体的に生きることを可能にすると考える。

期待される研究成果

介護サービスに従事している研究協力者とともに行うケアワークにおける利用者主体を尊重する支援の明確化の研究は、ケアワーカーの経験知を基礎にしているため、真に現場で実践できる研究であるとともに、高齢者のQOL向上に貢献するため、一定の意義を有すると考える。

1.高齢者の主体性尊重の具現化は、高齢者のQOLの向上を可能にし、それは介護予防に連動すると考えられる。
2.ケアワークにおける利用者主体の価値の明確化は、ケアワークの専門性の向上に寄与する。
3.上記1と2の結果、「ケアワーク」の社会的・経済的評価が高まる。

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研究代表者氏名 太田 健二
(オオタ ケンジ)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 16K02094
研究課題名 空間のアーキテクチャと規制に関する疫学・地理学・社会学による融合型研究

研究の目的

 「風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律」(以下、風営法)によるダンスクラブの規制がきっかけとなり2015年6月に同法は改正されたものの、新たに「遊興」による規制が問題視されている。その一方、科学的根拠に基づいた「健康増進法」によって規制が推進される受動喫煙対策は、飲食店等の屋内施設における履行が進んでいない。
 本研究は、改正風営法による「遊興」空間規制と健康増進法による受動喫煙規制という対照的なトピックを、公共的な空間のアーキテクチャと規制という観点から、疫学・地理学・社会学の学際融合的なアプローチにより分析・考察する。そして、現代の日本社会における課題を浮き彫りにするとともに、それに対する具体的な対策の提言を目的とする。

期待される研究成果

 本研究の最大の特色は、学際融合的な研究体制にある。空間の規制をテーマに、ふたつの異なる対比的なトピックに対し、疫学・地理学・社会学分野で取り組んでいる専門家集団が協働することで、これまでの枠組みにとらわれない発想で研究に取り組むことができる。
 データに基づく解決法をとる量的研究手法だけでは解決できない領域を質的研究のアプローチにより補うことで、これまで日本において困難であった課題解決を導くような研究成果が得られる可能性がある。
 また、世界標準となりつつある受動喫煙のない公共的な空間の整備と、グローバルなエンターテインメントである音楽で踊って楽しむ「遊興」空間への規制を検討することは、2020年に開催される東京オリンピックに備え、日本の都市空間とその利用がどうあるべきなのかを再検討することにもつながる重要な課題といえる。

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研究代表者氏名 春名 麻季
(ハルナ マキ)
所属 経営学部
経営学科
公共経営専攻
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 16K03313
研究課題名 婚姻・家族を規律する規範内容に関する基本権ドグマーティクの比較研究

研究の目的

 本研究の目的は、婚姻・家族の変遷に関連して、憲法学から見た法的規律のための一定の指針となるべき規範内容を考察することにある。そこでは、伝統的な婚姻・家族観の変遷が現実の社会でどのような法的事象となって現れるのかを明らかにするとともに、その背後に潜む個人の生き方・ライフスタイル決定の法的根拠となる「個人の尊重」、「個人の尊厳」という憲法原理の規範としての内容を明確にすることとなる。

期待される研究成果

 本研究は、平成20年の国籍法違憲判決で指摘され、平成25年の婚外子相続分差別違憲決定によって確認された「家族や親子関係関する意識・実態」の変化の基礎にある社会的事実としての「婚姻」・「家族」の変遷の内容を確認し、その事実に対処するための法制度を考える際の指針となるべき憲法規範の内容を理論的に考察するものである。これまでも個人のライフスタイルの変化から家族観の変化が指摘されていたが、実際には、国籍法違憲判決の反対意見は社会通念の変化についての疑問を提起し、また婚外子相続分差別事件に対しては最高裁の判断に対する一般市民からの批判の声が報道された。そこで、社会的事実としての「婚姻」・「家族」の変遷が本当に起きているのか否か、それはどのような法的事象として表れているのか、そして、そのような事象に対して最高法規としての憲法はどのように対応することを規範的に予定しているのかという問題を明らかにするための一助になるものと考える。

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研究代表者氏名 田原 範子
(タハラ ノリコ)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 16K04126
研究課題名 モビリティとシティズンシップ――ウガンダ・アルバート湖岸地域の共生原理

研究の目的

 グローバル化のもとで生じる国境を越えて展開される社会現象と社会問題を、社会学的アプローチにより解明する。主としてアフリカ大湖地域の漁村社会のフィールドワークを実施し、他地域の移民社会との比較研究も行う。

期待される研究成果

 トランスナショナルな移民の動態、国境を越えて「つながる」ネットワークの活用を明らかにして、モビリティの基底にある社会的政治的なメカニズムが明らかになる。そして、人間が何らかの共同体や社会に「帰属する」ことの意味をあらためて問い直すことを通して、「共生」のためのシティズンシップを展望する。

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