平成27年度 採択課題 研究概要

研究代表者氏名 松本 珠希
(マツモト タマキ)
所属 教育学部
教育学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 26350877
研究課題名 不妊女性の心の不調を探る:多嚢胞性卵巣症候群に関与する心理神経内分泌動態の解明

研究の目的

 不妊とは、生殖年齢にある男女が妊娠成立を希望して健常な性生活を営んでいるにも関わらず、2年以上経過しても妊娠の成立をみない状態を指す。女性の社会進出と晩婚化が進み、合計特殊出生率の低下がクローズアップされているが、この少子化という名の舞台の裏で、子どもを産みたくても産めないことで悩む女性は増加傾向にあるのが現状である。不妊の要因は多種多様だが、中でも多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome: PCOS)は、排卵障害を来す主要な不妊原因であり、生殖医療現場において頻繁に遭遇する疾患である。また、PCOS女性では、月経異常や性ホルモン分泌異常に加えて、うつや不安、自尊感情の低下など深刻な心理症状も高い頻度で発症することが報告されている。メンタルヘルスの悪化は、脳・神経・内分泌系が織り成すネットワークにより維持される生体の恒常性を損ない、身体症状のみならず、妊娠率や不妊治療の成績にも影響を及ぼすであろうことが推察されるが、PCOSの詳細なメカニズムと"心"の関与については未だ明らかにされていない。  本研究では、多彩な臨床症状を呈するPCOSを、心身相関の指標となる"自律神経活動"を基軸とした多因子性病態モデルとしてとらえ、心理・神経・内分泌要因の相互関係を探求することにより、その複雑なメカニズムを解明することを目的とする。加えて、PCOS女性の不妊治療前の心理状態及び治療の過程において生じるであろう抑うつ、不安、怒り、悲嘆等の心理症状やその女性の性格特性が、神経内分泌系に及ぼす影響と、妊娠率や治療成績への関与についても併せて検討する。

期待される研究成果

 PCOSの新たな診断基準と治療指針が制定され(日本産科婦人科学会2007)、その病態解明に向けて研究が加速化している。しかし、以前より指摘されてきたPCOS女性に見られる心の問題については、いまだ置き去りにされている感がある。不妊女性は、不妊であるという心の傷と不妊治療そのものが、往々にして、彼女らの人生において経験する最も強いストレスであると感じている。ストレスによってホルモンバランスの異常や生体恒常性の低下など健康状態が障害されると、個人のエネルギーは生殖機能に向かわず、個体の健康回復のために消費され、結果的に妊孕性の低下を招いてしまう。  本研究を通して、PCOSの心理・神経・内分泌要因の相互関係を探求することにより、その複雑なメカニズムを紐解くことが可能と考えている。また本研究で用いる自律神経活動指標は、筆者が従来実施した多数の研究で用いてきたものであり、うつ・不安を抱えるPCOS女性の心身のストレスを客観的に評価できるだけでなく、"出口の見えない長いトンネル"と称される不妊治療の過程で生じるPCOS女性の心身の変化の観察と治療効果の検討にきわめて有用と確信している。

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研究代表者氏名 木村 三千世
(キムラ ミチヨ)
所属 経営学部
経営学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 26380554
研究課題名 ワーク・ライフ・バランスを実現するための日本型ワークシェアリングの再構築

研究の目的

 正社員として雇用されている労働者が自己の状況に応じて、多様就業型ワークシェアリングを活用して労働時間を調整し、仕事と生活のバランスをとって健康的な労働者人生が実現できる働き方を探り、多様な状況に対応できるワークシェアリングについて提案する。 ※ ワークシェアリングとは雇用機会(仕事)、労働時間、給与・賃金を多くの労働者と分かち合うことである。多様就業型ワークシェアリングは状況に応じて労働時間を短縮するとともに、多様な働き方が可能になるシステムを導入して、雇用を維持・拡大することといえる。労働者自身が、①健康的に職業生活を中心として働きたい期間には多少の残業は厭わずフルに働くことを選択できたり、②育児・介護または自己啓発のために仕事以外に時間を割きたい場合には正規の労働時間より短い労働時間で働くことを選択できたり、③場合によっては労働者自身の体調に応じて特定日の特定の時間だけ働くことも選択できるなど、仕事と生活のバランスを調整して働くことが可能な就業形態のモデルを再構築する。

期待される研究成果

 近年、経済のグローバル化、産業構造の変化、少子高齢化、労働観の多様化などが進展しており、経営効率の向上を図る必要もあることから、働き方の見直しが急務となっている。さらに、現在の労働者は個人的生活において、多くの役割を担うことも求められている。こうした多様な課題に対応した働き方を実現するためには、状況に応じてフレキシブルに調整する必要がある。そこで、積極的に仕事にかかわったり、安心して子育てや介護ができたり、将来を展望した主体的なキャリア形成に取り組めたり、個人の状況に応じて無理なく仕事を継続するために、状況に応じた多様な雇用(柔軟な労働時間制度、短時間正社員、勤務地・職種限定勤務、在宅勤務など)が選択できる新たな就業環境を整えることが必要であると考えられる。  そこで本研究では、長い労働者人生における全労働時間や一定期間の労働時間を労働者自らがコーディネートすることによって、生活者として活用できる時間を創出して豊かな生活を実現するための方法を模索し、そのモデルを構築する。労働者自らがコーディネートするために、どのようなことが課題であり、どのような問題を克服する必要があるのかを究明し、解決するための方法を探ることは、ワーク・ライフ・バランスの見える化を促進することになる。長時間労働となりやすい現在の日本企業における就業状況において、ワーク・ライフ・バランス環境を整えることは重要課題となっているため、広く社会に貢献できるものである。

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研究代表者氏名 原田 保秀
(ハラダ ヤスヒデ)
所属 経営学部
経営学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 26380638
研究課題名 会計倫理教育手法の開発と評価-理論構築・実態分析・教育実践の観点より-

研究の目的

本研究では、会計不正を抑制するための鍵となる会計倫理の問題について、①会計倫理がなぜ必要かを明らかにする経済学的モデル構築の研究、②日本企業における企業倫理の内部制度化についての現状を把握・分析研究、③会計倫理の先進国であるアメリカ、カナダの会計倫理教育の現状把握・分析研究、④アクティブ・ラーニングに基づく新しい会計倫理教育手法の研究という4つのアプローチで研究を進める。これらの研究方法によって、会計倫理の学問的体系化を図ることが本研究の目的である。他の応用倫理の分野(医療倫理、技術倫理、環境倫理、企業倫理等)に比べて、日本ではあまり研究が進んでいない会計倫理研究の現状を考えると、多面的な視点で取り扱い、深化させていくことは意義があることといえ、大きな学術的貢献をなしうるものと考えられる。

期待される研究成果

会計倫理に関して、その重要性は会計不正が発生する度に声高に叫ばれることからも理解できることである。しかしながら、我が国において研究されている会計倫理の問題はそのほとんどが公認会計士の職業倫理に関するものであり、すべての会計に携わる人々を対象にした研究はわずかであるといえる。また、公認会計士に対する倫理教育についても、定まった方法はなく、効果的な教育方法の構築が望まれている。本研究の学術的な特色は、公認会計士の職業倫理ではなく、広く会計に携わる人々すなわち会計人を対象にした多面的な研究であるという点にある。本研究によって、会計倫理の必要性・重要性を理論ベースで明らかにすること(なぜ会計倫理が必要か)、会計倫理についてすでにかなりの研究が進んでいるアメリカ、カナダの状況を把握すること(教育の現状はどうか)、内部統制制度と絡めて日本企業における倫理の内部制度化を把握すること(実務上倫理はどう機能しているか)、新しい会計倫理教育方法の提案(効果的な教育方法を構築する第一歩)を通じて、我が国においていまだ多くの手つかずの部分がある会計倫理教育を飛躍的に進展させることが研究成果として期待される。

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研究代表者氏名 鳥海 直美
(トリウミ ナオミ)
所属 人文社会学部
人間福祉学科
健康福祉専攻
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 26380809
研究課題名 障害児への相談支援におけるアドボカシーに関する実証的研究

研究の目的

 本研究は、わが国のソーシャルワーク実践領域において、子どもの意見表明権の保障を価値基盤としながら、障害児の権利擁護の充実を目指すことを展望している。
 イギリスの子どもアドボカシーサービスの理念および制度を援用し、ライフステージの移行を伴う学齢期の在宅障害児を対象とするアドボカシーサービスの試行的実践を通して、障害児への相談支援モデルを開発することを目的とする。

期待される研究成果

(1)障害児相談支援事業における相談支援専門員の実践を可視化することによって、子どもの意見表明権が保障されにくい状況が浮き彫りになるものと予想される。現行の相談支援における代弁機能の限界を実証的に明らかにすることによって、障害児のアドボカシーサービスの潜在的ニーズを把握することが期待される。
(2)アドボカシーに着眼した相談支援の方法がガイドラインに反映されることによって、障害児への相談支援の質の改善が図られることが期待される。
(3)障害当事者が障害児の代弁者を担うことによって、ピアアドボカシーの可能性を拓くことが期待される。
(4)子どもの意見表明権にかかわる理解を実践現場に浸透させながら、それに実効性をもたせた相談支援モデルを提示することによって、国連・子どもの権利委員会による勧告に応えることが期待される。

備考

【連携研究者】
堀正嗣(熊本学園大学)

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研究代表者氏名 廣瀨 隆司
(ヒロセ タカシ)
所属 教育学部
教育学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 26381237
研究課題名 算数教育における児童の数学的価値としての審美性認識のメカニズム

研究の目的

算数教育において, 児童の施行と言動に影響する要因の1つとして, 数学的価値があげられる。数学的価値を「高度の自律性を持つ文化遺産としての算数・数学において, 我々の欲求を満たす事象や対象の性質と能力である」と定義するとき, 数学的価値の本質としての選択により, 児童は, 言動の様式, 手段, 目的に関して, 数学的に望ましいとされる選択を行うと考えられる。算数教育における望ましい選択として, 本研究では, 「人の美と醜を識別する性質・傾向」としての審美性を採り上げる。そこで, 本研究の目的は, 審美性認識に関する児童の特徴を述べること, 算数教育における審美性に関する測定尺度を開発すること, 審美性に関する教材開発を行うこと, 開発された教材を用いた授業実践により, 授業の効果を明らかにすることである。

期待される研究成果

(1)本研究の学術的な特色  我が国において, 数学的価値としての審美性に関する研究はあまり行われていない。算数の背景となる数学は, 「美しさ」を求める学問であるので, 算数教育において, 数と計算・量と測定・図形・数量関係の各領域において, 児童の数学的価値としての審美性認識に関する研究を進めることが, 本研究の学術的特色である。 (2)本研究の独創的な点  数学が美を求める学問であるにもかかわらず, 本研究に関する研究が国内ではあまり行われておらず, 算数・数学教育の中での審美性の位置付けは低い。また, 国外でも一部の研究者が行っているにすぎない。図形領域における審美性認識に関する第2学年から第6学年の児童の特徴を述べること, 因子分析等による審美性に関する測定尺度の開発, 第6学年の児童を対象とした審美性に関する教材開発を行うこと, 開発された教材を用いた授業実践による授業の効果について明らかにすることは, 幾つかの算数・数学教育に関連する学会の学会誌を参照する限り, ほとんど見当たらないのが現状である。したがって, これらが本研究の独創的な点である。 (3)予想される結果と意義  本研究の予想される結果と意義に関して, 図形領域における審美性認識に関する児童の特徴を述べることは, 審美性に関する教材開発への示唆となる。数学的価値としての審美性に関する測定尺度の開発及び審美性に関する教材開発を行うこと及び開発された教材を用いた授業実践による授業の効果について述べることは, 算数科への関心・意欲・態度に対して, 新たな観点を付加することになる。また, 各小学校での算数科の研修等に参加したり, 講演や指導助言を行ったりする際に, 審美性について話すことにより, 本研究の成果を教育現場にフィードバックすることは, 教師の教科書を見る視点を増やすという観点から, 授業改善に役立つと考えられる。

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研究代表者氏名 松山 由美子
(マツヤマ ユミコ)
所属 短期大学部
保育科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 26350351
研究課題名 幼稚園における子どもの学びと保育者の援助を支援する情報端末アプリケーションの開発

研究の目的

 スマートフォンやタブレットなど、操作性に優れたメディアの普及よって、幼児期の子ども達のメディア利用が進展しつつある。しかし、子どもの単独利用についてはコミュニケーション能力の発達などで危惧されるものでもある。幼児教育・保育の研究者と保育現場は、メディア利用をただ否定するのではなく、幼児にとって望ましいメディア環境、安心かつ適切なメディア利用方法を改めて検討する必要がある。幼児の育ちに適した情報の教育利用の形態について考え、幼児期の学びを援助し、かつ、保育者も安心して活用し保育をよりよく推進できるメディア教材の開発が求められる。本研究では、幼稚園における幼児の育ちとその育ちを支える保育者の援助に寄与するアプリケーションの開発を中心に、幼児教育現場おける望ましいメディア環境のあり方を提案する。

期待される研究成果

 幼児教育の分野では、従来、幼小連携の強化及び家庭との連携の強化が求められている。本研究で、幼児教育現場に即したタブレット利用ができるアプリケーションの開発とタブレットを活用した保育を通して、これらの連携が具体的に進む可能性がある点が特色である。保育から学校教育への接続につながるようなアプリケーションの内容の吟味や、家庭でのタブレットやスマートフォン利用と幼稚園でのタブレット利用との連携ができるような利用法は、幼児教育現場における設定保育内での使用を想定したアプリケーションで初めて可能であると考える。  さらに、一部のメディア活用推進者による幼児教育現場への導入ではなく、実際に子どもたちと接している若い保育者でも導入の意義を感じることができ、気負いなく使える操作性をもつタブレット利用を想定したアプリケーションの開発によって、幼児教育現場におけるメディア活用が身近になることを想定している。

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