平成26年度 採択課題 研究概要

研究代表者氏名 岩尾 洋
(イワオ ヒロシ)
所属 教育学部
教育学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(B) 研究課題番号 24390064
研究課題名 心不全に及ぼす慢性炎症の役割

研究の目的

心不全は慢性炎症を伴って発症している。心不全時に機能亢進が生じている交感神経系・RRA系と、炎症関連細胞・サイトカインやエキクスソームの役割を解析することにより心不全の病態解明を目指す。

期待される研究成果

心不全は血行力学的負荷や虚血や遺伝子異常による持続的なストレスにより炎症反応が惹起され慢性化することにより組織のリモデリングと機能障害が起こる。その結果、交感神経系とレニン・アンジオテンシン系の活性化と、慢性炎症による炎症性サイトカインやエクソソームの持続的分泌により心筋細胞肥大や間質線維化などの心筋組織のリモデリングが生じる。本研究では慢性炎症と心筋障害の関連を明らかにする目的で、病態の形成に深く係わる3種類の細胞、すなわち心筋細胞、炎症系細胞(マクロファージ、肥満細胞)と線維芽細胞との細胞間コミュニケーションを解析し、心不全の病態解明と治療標的を探る。

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研究代表者氏名 矢羽野 隆男
(ヤハノ タカオ)
所属 人文社会学部
日本学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 22520085
研究課題名 変革期における大坂漢学の研究―懐徳堂を中心に―

研究の目的

 懐徳堂は、享保9年(1724)に町人の手で大坂に設立され、同11年(1726)に幕府の官許を受けた漢学の学校である。中井竹山(1730~1804)・履軒(1732~1817)の兄弟がいた最盛期には江戸の昌平黌を凌ぐと言われ、富永仲基、山片蟠桃ら異才を輩出したことで知られる。しかし、その後は校運振るわず、明治2年に廃校となった。従来その原因は、主に経済的、社会的な面から説明され、学問・思想の面からの探究は少なく、さらなる研究が俟たれる。
 たとえば懐徳堂研究の基本文献とされる西村天囚『懐徳堂考』は、<江戸末期における漢学の衰退>、<懐徳堂最後の教授・並河寒泉(1797~1879)の学術思想の朱註一辺倒>を衰退の要因に挙げる。しかし前者については、明治期大阪の漢学塾・泊園書院は大いに栄えた。後者についても、懐徳堂は寒泉に限らず五井蘭洲から朱子学を宗とするのであって、単に寒泉の朱子学に理由を求めるのは粗雑である。幕末維新期における懐徳堂の学問・思想の解明を必要とするゆえんである。
 本研究は、並河寒泉の日記・詩文集・山陵調査報告書などこれまで十分に活用されてきたとはいえない資料を用い、懐徳堂の学問・思想的な支持基盤(門人・交友など)や政治・社会に対する意識や思想などに注目して、幕末の懐徳堂の実態に迫ろうとするものである。
 また、懐徳堂とともに大坂漢学を代表し、幕末から昭和にかけて栄えた泊園書院は、その国家主義的学風が指摘されるが、合理主義・批判主義的な懐徳堂との対立が強調されこそすれ、両者を結びつけての説明はあまりなされてこなかった。しかし、幕末維新期の思想状況に注目すれば、大坂漢学における両者の一貫した説明も可能と思われる。幕末維新期の懐徳堂を中心に泊園書院を併せて考察し、変革期における大坂漢学の思想状況を明らかにしたい。

期待される研究成果

 並河寒泉は漢文による膨大な日記、詩文稿などを残しており、その利用価値は大きい。ただ、それらは資料的性質から断片的で、寒泉の学問・思想の体系性を見出すのは難しい。そこで有用と思われるのが「誰に、何が、どのように語られたか」という視点である。日記には門人の入退学・身分、出講先、講義内容などの情報が克明に記録され、詩文稿には、例えば門人への送別辞などから寒泉の学問観や学派意識などが読み取れる。変革期の懐徳堂が「誰に、何を、どのように」発信したかにより、幕末懐徳堂の社会的・思想的な位置が明確になると考えている。
 また、これまで全く注目されていなかった寒泉の残した著述に山陵調査報告書がある。安政2年に寒泉が幕命を奉じて天皇陵の比定を目的に行なった調査の報告書で、現在の天皇陵治定の基礎となった「文久の修陵」にも利用された。寒泉の尊王思想を理解する材料となるとともに、陵墓研究史上にも位置づけることが可能となろう。
 さらに泊園書院の藤澤東?(1794~1864)についても考察を及ぼしたい。泊園書院は寒泉と同時期の大坂にあって隆盛を呈した徂徠学系の漢学塾で、その塾長の東?は嘉永から元治(1848~1865)にかけて大坂一の学者と称された。懐徳堂の徂徠批判、それに対する東?からの再批判と、両者に学派的な対立が見られたことは知られるが、東?の著述には懐徳堂との接点も見出せる。幕末維新期の懐徳堂を中心に泊園書院を併せ考察することにより、変革期における大坂漢学の思想状況を明らかにし、近世近代を貫く大坂漢学史観を提示できるのではないかと考えている。

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研究代表者氏名 田島 智子
(タジマ トモコ)
所属 人文社会学部
日本学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 23520263
研究課題名 平安期における文学と美術の相互関係―文献と文献に近似する現存美術作品からの探求―

研究の目的

(1)目的
平安時代の文学作品には、美術的な作品の記述がたくさん出てきます。屏風絵・歌絵・地獄絵・物語絵などの絵、州浜などの作り物、櫃などの調度品の模様、衣装の模様と様々です。それらは、物語に取り込まれ、歌に詠まれるなどして、文学に欠くべからざる存在です。また、当時の貴族社会にあっては、生活の一部でもありました。そのような文学と美術の関係を解明し、平安時代の文化のありようを浮き彫りにすることが、本研究の目的です。
(2)研究の基盤となる調査
その研究の基盤とすべく、下記の二つの調査を行います。
【調査1…文献に見られる美術作品の記述を収集し、コンピューターで整理。】
【調査2…屏風絵も含めて、平安期の美術作品はほとんど現存しない。平安期の絵をイメージする次善の方法として、正倉院御物や後世の美術作品から近似のものを主終始、コンピューターで整理。】

期待される研究成果

(1) 平安期の美術に関する資料集の作成
美術に関する文献での記述を収集整理して、資料集にまとめます。また、文献の記述を視覚的にとらえるために、現存する美術作品から近似する場面を求め、写真で確認できるようにします。このような資料集は、研究者だけでなく一般の人々にとっても、平安文化を理解する上で有効となるでしょう。
(2) 文学と美術についての総合的な考察
文献に見られる記述は、屏風絵が圧倒的に多い状況です。屏風歌については、すでに拙著『屏風歌の研究 論考篇・資料篇』(和泉書院 2007年 第九回紫式部学術賞受賞)において、資料収集とその研究を行いました。それと比較することで、用例の少ない他の美術作品のあり方を解明することができます。
たとえば、州浜という作り物を例にすると、文献には次のようなパターンが見出せます。
「川に千鳥の風景」(『宇津保物語』藤原君巻)
「海に海人の風景」(『同』祭使巻)
「松に鶴の風景」(『同』蔵開上巻)
これらと同じ構図は、屏風絵でも確認できます。屏風絵と比較することで、州浜に選ばれた構図が、屏風歌でも親しまれていたことがわかり、当時の文化的な志向だったことが判明するわけです。このように、屏風絵及びそれ以外の美術作品全般と、それに伴う文学を広く研究対象とし、美術の面から平安文化の意義を明らかにします。

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研究代表者氏名 中本 和彦
(ナカモト カズヒコ)
所属 教育学部
教育学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 23531225
研究課題名 新しい地理教育フレームワークに基づく地誌授業モデルの開発・検証

研究の目的

 本研究目的は,新学習指導要領中学校社会地理的分野,高等学校地理歴史科地理Bにおいて新たに導入された様々な地誌学習の授業化への当惑した問題状況を踏まえ,地誌学習を類型化している従来の枠組みを検討し,地誌学習も含めた地理の新たな地理教育フレームワークを考察,提案し,その枠組みを用いて実際の授業を類型化するとともに,それに基づいた現状の改善に資する地誌学習の授業モデルを開発して実践し,その実現可能性・有効性について検証することにある。

期待される研究成果

 本研究の期待される研究成果は,次の4点に要約することができる。
(1)新しい地理教育フレームワークによって,従来の様々な地理の授業を,授業レベルで統一的に類型化できる点。
(2)(1)によって,今日授業化に当惑している様々な地誌学習が,社会認識形成の面から統一的に説明される,という課題  解決的,学問的な意義を持つ点。
(3)新しい地理フレームワークに位置付いた地誌学習の授業モデルが,実践可能性のある,現状の課題を解決するものとし  て,具体的に開発,提示される点。
(4)(3)によって,研究と教育現場をつなぐ,教育実践的な意義を持つ点。

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研究代表者氏名 坂本 暁美
(サカモト アケミ)
所属 教育学部
教育学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 24501227
研究課題名 音楽科の学力を育成するためのデジタル教科書の在り方

研究の目的

 近年、デジタル教科書の研究が国家の重点課題に位置づけられ、すでに一部の学校で実証研究が始まっている。音楽科教育では知識・技能の習得が主たる目的ではなく、音に含まれるものを自分なりに意味づけし美的価値を見出す思考回路をつくることが目的である。音楽科の学力育成のためのデジタル教科書が存在していないという問題意識から、本研究では、デジタル教科書を「学力を高めるツール」の1つと捉え、①指導原理の提示、②活用方法、③教材としての在り方を提案する。

期待される研究成果

 これまで音楽科では、演奏の過程を聴き直すことの教育的意義は指摘されながら、学習者自身が日常的に容易にそれができる状況ではなかった。デジタル教科書活用により、例えば、自分の演奏過程を納得がいくまで聴き直して自己評価の質を高めたり、知覚・感受した内容を即時に電子黒板に投影して他の子どもと感じ方を比較したり、遠隔地の学校と授業を行って情報を交換することが可能となる。散発的なコンテンツ開発ではなく、学力育成のための指導原理から活用方法までを包含したデジタル教科書とその活用法の提示は、音楽科だけではなく他教科におけるデジタル教科書活用に新たなビジョンを開く意味で意義があると考える。

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研究代表者氏名 呂 順長
(ロ ジュンチョウ)
所属 人文社会学部
国際キャリア学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 24520818
研究課題名 清末民国初期の中国の教育雑誌から見た日本近代教育の中国への影響

研究の目的

 清末民国初期(約1895―1920年頃)における日中教育交流の最大の特徴は、中国が留学生の派遣、日本人教習の招聘、教育視察者の派遣、日本書の翻訳などを通じて日本に学び、中国の近代教育の構築を図ったことにあると言えよう。
 これについて、阿部洋の『中国の近代教育と明治日本』は清末教育改革における「日本モデル」、中国人の日本留学、お雇い日本人教習の活動を中心に先駆的な研究を行っている。王桂の『中日教育関係史』は先秦時代から中華民国時代までの2000年余りの日中教育関係の歴史をまとめているが、近代の日中教育関係の研究に関してはやや疎略の嫌いがある。田正平の『留学生與中国教育近代化』は中国人日本留学生に大きな比重を割いて、彼らが中国の教育近代化に果たした役割を研究している。また阿部洋を代表とする研究グループは明治後期の日本の敎育雑誌に掲載された中国関係の記事を収集し、資料集として『近代日本のアジア敎育認識』を世に出し、学界に大きな便宜を与えている。拙著『清末中日教育交流之研究』は『遊学生監督処官報』などの新史料を駆使し、清末の浙江省出身の留学生、中国人の日本教育視察、日本人の中国教育認識、の3編に分けて、これまであまり注目されなかった人物に焦点を当てつつ、清末における日中の緊密な教育交流関係の解明を試みた。また拙編による『晩清中国人日本考察記集成・教育考察記』と『官報』(遊日学生監督処刊行)の影印出版も学界に反響を呼んでいる。
 しかし、清末民国初期の教育雑誌の日本教育関連記事は近代における日中教育交流、特に日本の中国教育近代化に与えた影響の実態を解明するうえ、非常に大事な第一次資料であるにも関わらず、これまでにそれに対して全面的に調査されたことがなく、その利用は必ずしも十分とは言えない。
 本研究は、同時期の中国各地の教育雑誌に掲載された日中の教育交流や日本の教育事情などに関する記事を調査・収集し、その資料に基づき、近代において日本がどのように中国の教育近代化に影響をもたらしたかなど、清末民国初期の日中教育交流の実態をさらに実証的に解明しようとするものである。

期待される研究成果

 本研究は期間を4年とし、主に以下の作業を行う。
(1)清末民国初期の教育雑誌中の日本教育関係記事の調査・収集: 海外研究協力者の協力を得ながら、約1年半の時間をかけて中国の主要図書館から各教育雑誌中の日本教育関係記事を調査・収集する。
(2)資料目録と解題の作成: 収集済みの資料の目録を作り、さらに雑誌ごとに解題を作成する。題名は「○○雑誌に見る日本教育関係記事の解題」(仮題)とする。
(3)清末における日中教育交流実態の更なる究明: 清末における日中教育交流について数多くの研究成果が上がっているが、同時期の中国の教育雑誌の関連記事の利用がまだまだ不十分な状態にある。研究メンバーが各自の関心に基づき、収集済みの資料を活用して研究を行う。たとえば、日本の近代教育はどのような形と規模で中国の各地方の教育に影響を及ぼしたか、各地域の差がどのような形で現れたかなどを実証的な研究により明らかにする。
(4)中華民国初期における日中教育交流実態の究明: 清末における中国の教育改革は「日本モデル」で行われたが、民国時代以降、中国人は欧米諸国に目を向けはじめ、その関心が少しずつ日本から離れたとされている。本研究の一部として民国初期に日本が中国の近代教育に影響を与え続けた事例に基づき、その影響の実態を明らかにする。
(5)研究成果のまとめ: 本研究の成果のまとめとして『清末民国初期の教育雑誌の日本教育関連記事』(目録篇・資料篇・研究篇)(仮題)を作成する。また可能な限り出版を目指す。

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