平成25年度 採択課題 研究概要

研究代表者氏名 呂 順長
(ロ ジュンチョウ)
所属 人文社会学部
国際キャリア学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 24520818
研究課題名 清末民国初期の中国の教育雑誌から見た日本近代教育の中国への影響

研究の目的

 清末民国初期(約1895―1920年頃)における日中教育交流の最大の特徴は、中国が留学生の派遣、日本人教習の招聘、教育視察者の派遣、日本書の翻訳などを通じて日本に学び、中国の近代教育の構築を図ったことにあると言えよう。
 これについて、阿部洋の『中国の近代教育と明治日本』は清末教育改革における「日本モデル」、中国人の日本留学、お雇い日本人教習の活動を中心に先駆的な研究を行っている。王桂の『中日教育関係史』は先秦時代から中華民国時代までの2000年余りの日中教育関係の歴史をまとめているが、近代の日中教育関係の研究に関してはやや疎略の嫌いがある。田正平の『留学生與中国教育近代化』は中国人日本留学生に大きな比重を割いて、彼らが中国の教育近代化に果たした役割を研究している。また阿部洋を代表とする研究グループは明治後期の日本の敎育雑誌に掲載された中国関係の記事を収集し、資料集として『近代日本のアジア敎育認識』を世に出し、学界に大きな便宜を与えている。拙著『清末中日教育交流之研究』は『遊学生監督処官報』などの新史料を駆使し、清末の浙江省出身の留学生、中国人の日本教育視察、日本人の中国教育認識、の3編に分けて、これまであまり注目されなかった人物に焦点を当てつつ、清末における日中の緊密な教育交流関係の解明を試みた。また拙編による『晩清中国人日本考察記集成・教育考察記』と『官報』(遊日学生監督処刊行)の影印出版も学界に反響を呼んでいる。
 しかし、清末民国初期の教育雑誌の日本教育関連記事は近代における日中教育交流、特に日本の中国教育近代化に与えた影響の実態を解明するうえ、非常に大事な第一次資料であるにも関わらず、これまでにそれに対して全面的に調査されたことがなく、その利用は必ずしも十分とは言えない。
 本研究は、同時期の中国各地の教育雑誌に掲載された日中の教育交流や日本の教育事情などに関する記事を調査・収集し、その資料に基づき、近代において日本がどのように中国の教育近代化に影響をもたらしたかなど、清末民国初期の日中教育交流の実態をさらに実証的に解明しようとするものである。

期待される研究成果

 本研究は期間を4年とし、主に以下の作業を行う。

(1) 清末民国初期の教育雑誌中の日本教育関係記事の調査・収集: 海外研究協力者の協力を得ながら、約1年半の時間をかけて中国の主要図書館から各教育雑誌中の日本教育関係記事を調査・収集する。
(2) 資料目録と解題の作成: 収集済みの資料の目録を作り、さらに雑誌ごとに解題を作成する。題名は「○○雑誌に見る日本教育関係記事の解題」(仮題)とする。
(3) 清末における日中教育交流実態の更なる究明: 清末における日中教育交流について数多くの研究成果が上がっているが、同時期の中国の教育雑誌の関連記事の利用がまだまだ不十分な状態にある。研究メンバーが各自の関心に基づき、収集済みの資料を活用して研究を行う。たとえば、日本の近代教育はどのような形と規模で中国の各地方の教育に影響を及ぼしたか、各地域の差がどのような形で現れたかなどを実証的な研究により明らかにする。
(4) 中華民国初期における日中教育交流実態の究明: 清末における中国の教育改革は「日本モデル」で行われたが、民国時代以降、中国人は欧米諸国に目を向けはじめ、その関心が少しずつ日本から離れたとされている。本研究の一部として民国初期に日本が中国の近代教育に影響を与え続けた事例に基づき、その影響の実態を明らかにする。
(5) 研究成果のまとめ: 本研究の成果のまとめとして『清末民国初期の教育雑誌の日本教育関連記事』(目録篇・資料篇・研究篇)(仮題)を作成する。また可能な限り出版を目指す。

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研究代表者氏名 原 順子
(ハラ ジュンコ)
所属 人文社会学部
人間福祉学科
健康福祉専攻
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 25380811
研究課題名 聴覚障害者への相談支援における文化モデルアプローチの研究

研究の目的

 聴覚障害者を対象に相談支援活動をおこなうソーシャルワーカーの支援モデルとして「文化モデルアプローチ」の有効性を明確にし、且つ理論的に構築することを目的として研究をおこなう。具体的には、クライエントが聴覚障害者の場合には、聴者の場合とは異なる独自の「文化モデルアプローチ」が有効であり、このアプローチは聴覚障害者のろう文化を基盤としたストレングス視点に基づくアプローチであることを実証する。実証化のために、ろう文化に関する調査研究および聴覚障害ソーシャルワーカー(海外のソーシャルワーカーを含む)への質的・量的調査を実施する。更に、主流文化である聴文化に対するろう文化の有り様についても考察する。

期待される研究成果

 聴覚障害ソーシャルワーカーのろう文化視点による「文化モデルアプローチ」が有効であることが明らかになれば、聴覚障害ソーシャルワークの専門性がより明確となり、クライエントとしての聴覚障害者を医療・病理モデルではなく、文化モデルでの視点で相談支援をおこなうことの是非が明らかになる。また、「文化モデルアプローチ」が実践されるには、独自のカルチュラル・コンピテンスが必要とされ、社会福祉士、精神保健福祉士といった国家資格取得者が少ない現状から、聴覚障害に関する専門知識や技術をもった聴覚障害ソーシャルワーカーの育成に貢献できると考える。

<具体的な研究成果>
① 聴覚障害者の独自の文化であるといわれるろう文化の実態、デフコミュニティおよび聴者社会での認知度を調査により明確にする。
② ろう文化視点に基づく「文化モデルアプローチ」が有効であることを、聴覚障害者を対象に相談支援をおこなっているソーシャルワーカーの相談内容から明らかにする。
③ ろう文化に対する認知度は国によって違うが、障害学研究が進んでいるアメリカとイギリスを中心にその実態を調査し、日本との相違点を明らかにする。
④「文化モデルアプローチ」により、聴覚障害者へのストレングス視点での介入 が可能となることを理論的に明確化する。

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研究代表者氏名 毛受 矩子
(メンジュ ノリコ)
所属 教育学部
教育学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 25463653
研究課題名 高齢妊娠・初出産の母親に対する支援とヘルスリテラシー構築プログラムに関する研究

研究の目的

母性の加齢による不妊症・高度生殖医療・先天性の障がい児発生率等の増加は高齢妊娠・初出産の母親にとり妊娠期から身体的精神的不安を増大させる要因ともなっている。一方核家族化、少子化の中で育児の未体験者も多く、産後うつ状態も増加傾向にある。併せて高齢妊娠・母にとっては、家族の生活習慣病や介護等の健康課題も重なってくる年代である。しかし、高齢妊娠・初出産の母親とその家族のための支援に関する取り組みは少ない。そこで本研究では高齢妊娠・初出産の母親が持つ心身の健康課題を明らかにし、母親とその家族のライフサイクルに添ったソーシャルキャピタル(協調・規範・ネットワーク力とする)・ヘルスリテラシー構築(健康面での情報収集や活用力とする)のための直接的・遠隔的健康支援プログラムを開発することにある。

期待される研究成果

高齢妊娠・初出産が年々増加する中で、少子化、高齢社会は避けられない時代にきている。そこで、本研究では
①高齢妊娠・初出産が持つ身体的心理的健康課題を明らかにすることができる。 ②併せてソーシャルキャピタル・ヘルスリテラシー構築の視点から今何が求められているかを明らかにすることができる。 ③高齢妊娠・初出産の母・児とその家族のライフステージに添った健康支援プログラムの開発ができる。Skype利活用の遠隔的健康支援情報は今後広く汎用が可能となる。 ④ライフステージで生じる健康イベントを予測しつつ、健康支援を開始することで高齢妊娠・初出産の母に育児負担と育児不安の軽減を図ることができ子ども虐待予防に繋がる。

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研究代表者氏名 今井 真理
(イマイ マリ)
所属 人文社会学部
人間福祉学科
保育専攻
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 25370196
研究課題名 脳機能イメージングを活用した芸術表現時の脳内機序の解明

研究の目的

 本研究は非科学的なるものと一般的に認識されている芸術領域を科学的に捉えることを目的としている。
 また、データ解析モデルを作成し、芸術表現時に対する脳の反応を司る神経メカニズムを研究し、 脳機能イメージングによる芸術表現時の脳内機序を目指すものである。

期待される研究成果

 次世代の脳機能イメージング応用技術の開発めざすこととし、また、芸術表現時の脳内活動の全貌を明らかにしつつ、一般的には抽象的で理解しづらいとされている芸術の分野において最適なシステムの構築に寄与できると考える。

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研究代表者氏名 田中 晶子
(タナカ アキコ)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 准教授
研究種目 新学術領域研究
(研究領域提案型)
研究課題番号 24101508
研究課題名 司法面接における子どもの語り:質問形式と応答の関係性について

研究の目的

 海外では、事件や事故に関わったり、虐待被害にあった子どもから、出来事や体験について聴き取る際に、負担が少なく、正確な報告を促すようデザインされた面接法(司法面接や事実確認面接と呼ばれます)が考案され、用いられている。近年、日本においてもそのような面接法の翻訳が紹介され、実際に虐待が疑われる事例等で用いられ始めているが、日本における司法面接の基礎的な研究は少なく、欧米で用いられている手法が日本の子どもたちにどの程度有効であるかについては未だ不明確な点が多く残されている。本研究では、日本の子どもたちへ司法面接の形式に則った聴き取りを行うことにより、大人の質問と子どもの応答の関係性や、司法面接という場でのコミュニケーションの特徴を明らかにすることを目的とする。

期待される研究成果

 本研究において期待される研究成果(本研究が目指すもの)は以下の2点である。  ①日本の子どもたちへの司法面接の効果について明らかにします。特に、面接者の質問形式と子どもの応答との関係性や、子どもの語りの特徴を概観することにより、司法面接という場での大人と子どものコミュニケーションの特徴について明らかにすることを目指す。②本研究成果を実務家へフィードバックし、子どもとの面接を行う際に参考となりうる知見(基礎的データ)を提供するとともに、大人と子どものコミュニケーションを考える上での実証的なデータを積み重ねる起点となる資料を提示することを目指す。

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研究代表者氏名 春名 麻季
(ハルナ マキ)
所属 経営学部
経営学科
職位 講師
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 23730035
研究課題名 個人の尊厳原理の下での家族・親子関係の法的課題に関する多面的考察

研究の目的

 本研究は、生殖補助医療技術の急速な発展により、社会の一般的関心の下で現実に法的問題として取り扱われた人工生殖による家族・親子関係、さらに性同一性障害による性別変更のための要件に関連する家族・親子関係を、単に民法上の制度としての家族・親子の問題という現行法制度の下での視点で取り上げるのではなく、より高次の法原理から、どのような規律・考察が必要で可能なのかを明らかにすることが主たる目的となる。そのためには、それぞれの場面で問題となる内容や性質の違いから家族・親子問題を多面的に把握する必要がある。そのうえで、高次の法原理としての「個人の尊厳」という憲法原理から、そこでの法的課題を考察することが必要と考えられる。本研究は、上記の問題に対して日本の最高裁判例では簡単に処理されたために、また、生殖補助医療技術利用のための公的報告書の中では抽象的に触れられているだけの、憲法原理としての「個人の尊厳」の規範内容の下での家族・親子関係と、それを導くための比較対象としてのドイツ・ヨーロッパ基本権の下で問題とされる家族・親子の規範的問題を明らかにすることを通して、憲法問題としての家族・親子関係のあり方を明らかにする。

期待される研究成果

 本研究は、家族・親子関係それ自体を憲法の視点から検討すべき対象としてとらえる点に1つの学術的な特色があり、親子関係の構築のための法制度に対する内容形成という観点から、「個人の尊厳」を抽象的にではなく具体的な規範的内容を持つものとして、家族・親子法制の内容形成の基準として用いる可能性を検討する点に1つの研究成果を見出すことができる。そのうえで、家族・親子法制という個人の身分関係についての憲法上の評価だけではなく、それを発生させる個人の(例えば生殖補助医療技術の利用や性別変更の決定)の憲法上の自由という観点からの検討も行うという方法を用いることから、家族・親子関係を個人の憲法上の自由とそれに対する評価という2つの次元の議論を組み合わせるという独創的な発想を持つ。しかも、本研究は、子どもが存在しない親子関係はそもそも考えられないという当たり前のことを出発点にし、抽象的レベルでの「人間の尊厳」原理そのものではなく、家族・親子構成メンバー個々人の「個人の尊厳」の重要性を確認し、家族・親子関係それ自体を憲法の視点から検討すべき対象としてとらえる点に1つの学術的な特色があるといえる。

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