平成25年度 採択課題 研究概要

研究代表者氏名 鳥海 直美
(トリウミ ナオミ)
所属 人文社会学部
人間福祉学科
健康福祉専攻
職位 准教授
研究種目 基盤研究(B)一般 研究課題番号 22330176
研究課題名 ジレンマ状況におけるソーシャルワーク実践の価値生成に関する実証的研究

研究の目的

 本研究の目的は、障害者・児の生活支援にかかわる熟練のソーシャルワーカー(社会福祉士などの相談援助職)の経験に焦点をあてて、自己決定を巡るジレンマ状況における判断過程および支援過程を分析することによって、実践現場に生成されるソーシャルワーク(相談援助)実践の価値を実証的に明らかにすることである。
 まずは、多様な価値規範が実践現場にどのように浸透し、熟練者にとって自己決定を巡るジレンマがどのように経験されているかを明らかにする。次に、ジレンマ状況にある熟練者の主体性や倫理的感受性の発現の仕方に着目しながら、その判断過程および支援過程を明らかにし、ジレンマの解決に向けて創出される支援関係や支援活動を把握する。さらに、それらが本人やソーシャルワーカーにとってどのように意味づけられ、実践現場にどのような価値をもたらしているのかを検討する。
 本研究の研究者はすべて障害者・児の支援に従事する者であり、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者の生活支援にかかわる現場でのフィールドワークを通して研究に取り組むこととする。

期待される研究成果

 ソーシャルワーカーによる自己決定を巡るジレンマは、「制度の谷間のニーズ」を認識することと分かち難く経験されていることが予測される。また、ソーシャルワーク実践の価値生成過程には、ジレンマ状況にかかわる実践者の主体性や倫理的感受性のあり方、本人との協働のあり方、他職種との連携のあり方に特色があることが予測される。さらに、そのような実践を通して生成される価値は、「自己決定の尊重」という原理のみに収束されないことが予測される。
 本研究の意義は、熟練者によるソーシャルワーク実践が生成する価値を明らかにすることを通して、ソーシャルワーカーの有する実践知に着眼した専門職像を提示し、現任者研修のカリキュラムの充実に向けて貢献することにある。また、探索的ではあるものの、熟練者の経験から自己決定を巡るジレンマの解決に向けた道筋を示すことによって、研究成果を障害者・児の支援にかかわる実践現場に還元することができると考えられる。

備考

【研究分担者】
樽井 康彦(同志社大学)、橋本 卓也(大阪保健医療大学)、與那嶺 司(大阪人間科学大学)

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研究代表者氏名 田原 範子
(タハラ ノリコ)
所属 人文社会学部
社会学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(B)海外学術調査 研究課題番号 22402043
研究課題名 ウガンダ・アルバート湖岸の漁村に生成する共同性
――移動と漁労に住まう人びと――

研究の目的

 東アフリカ・ウガンダ共和国のアルバート湖湖岸の移民社会は、周辺地域の紛争のなか1960年代に誕生し1980年代後半にウガンダの地方政治組織と市場に組み込まれた。社会秩序の再編成・流動化のなかで、人びとは、複数の生活拠点と多重的な帰属によるライフスタイルを実践している。その現状を明らかにし、社会学の生活理論に新たな提言を行う。

期待される研究成果

 移動のなかに数世代に渡って生きている人びとが構築する共同性、移動先の生活世界と移民らが準拠するアルルランドの関連性を解明する。具体的には、下記(1)(2)について調査研究を行う。

(1)宗教的慣習・儀礼の創造と編成
■祖霊崇拝概念、アビラとジョクの言説分析
■西ナイルにおける葬送儀礼ミエル・アグワラの映像資料化 

(2)漁労活動における協同論理
■各岸におけるBMU(岸管理単位)と漁労者の関係性の把握
■漁労の祭祀を司るJaramの生活史記述

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研究代表者氏名 矢羽野 隆男
(ヤハノ タカオ)
所属 人文社会学部
日本学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 22520085
研究課題名 変革期における大坂漢学の研究―懐徳堂を中心に―

研究の目的

 懐徳堂は、享保9年(1724)に町人の手で大坂に設立され、同11年(1726)に幕府の官許を受けた漢学の学校である。中井竹山(1730~1804)・履軒(1732~1817)の兄弟がいた最盛期には江戸の昌平黌を凌ぐと言われ、富永仲基、山片蟠桃ら異才を輩出したことで知られる。しかし、その後は校運振るわず、明治2年に廃校となった。従来その原因は、主に経済的、社会的な面から説明され、学問・思想の面からの探究は少なく、さらなる研究が俟たれる。
 たとえば懐徳堂研究の基本文献とされる西村天囚『懐徳堂考』は、<江戸末期における漢学の衰退>、<懐徳堂最後の教授・並河寒泉(1797~1879)の学術思想の朱註一辺倒>を衰退の要因に挙げる。しかし前者については、明治期大阪の漢学塾・泊園書院は大いに栄えた。後者についても、懐徳堂は寒泉に限らず五井蘭洲から朱子学を宗とするのであって、単に寒泉の朱子学に理由を求めるのは粗雑である。幕末維新期における懐徳堂の学問・思想の解明を必要とするゆえんである。
 本研究は、並河寒泉の日記・詩文集・山陵調査報告書などこれまで十分に活用されてきたとはいえない資料を用い、懐徳堂の学問・思想的な支持基盤(門人・交友など)や政治・社会に対する意識や思想などに注目して、幕末の懐徳堂の実態に迫ろうとするものである。
 また、懐徳堂とともに大坂漢学を代表し、幕末から昭和にかけて栄えた泊園書院は、その国家主義的学風が指摘されるが、合理主義・批判主義的な懐徳堂との対立が強調されこそすれ、両者を結びつけての説明はあまりなされてこなかった。しかし、幕末維新期の思想状況に注目すれば、大坂漢学における両者の一貫した説明も可能と思われる。幕末維新期の懐徳堂を中心に泊園書院を併せて考察し、変革期における大坂漢学の思想状況を明らかにしたい。

期待される研究成果

 並河寒泉は漢文による膨大な日記、詩文稿などを残しており、その利用価値は大きい。ただ、それらは資料的性質から断片的で、寒泉の学問・思想の体系性を見出すのは難しい。そこで有用と思われるのが「誰に、何が、どのように語られたか」という視点である。日記には門人の入退学・身分、出講先、講義内容などの情報が克明に記録され、詩文稿には、例えば門人への送別辞などから寒泉の学問観や学派意識などが読み取れる。変革期の懐徳堂が「誰に、何を、どのように」発信したかにより、幕末懐徳堂の社会的・思想的な位置が明確になると考えている。
 また、これまで全く注目されていなかった寒泉の残した著述に山陵調査報告書がある。安政2年に寒泉が幕命を奉じて天皇陵の比定を目的に行なった調査の報告書で、現在の天皇陵治定の基礎となった「文久の修陵」にも利用された。寒泉の尊王思想を理解する材料となるとともに、陵墓研究史上にも位置づけることが可能となろう。
 さらに泊園書院の藤澤東畡(1794~1864)についても考察を及ぼしたい。泊園書院は寒泉と同時期の大坂にあって隆盛を呈した徂徠学系の漢学塾で、その塾長の東畡は嘉永から元治(1848~1865)にかけて大坂一の学者と称された。懐徳堂の徂徠批判、それに対する東畡からの再批判と、両者に学派的な対立が見られたことは知られるが、東畡の著述には懐徳堂との接点も見出せる。幕末維新期の懐徳堂を中心に泊園書院を併せ考察することにより、変革期における大坂漢学の思想状況を明らかにし、近世近代を貫く大坂漢学史観を提示できるのではないかと考えている。

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研究代表者氏名 田島 智子
(タジマ トモコ)
所属 人文社会学部
日本学科
職位 教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 23520263
研究課題名 平安期における文学と美術の相互関係―文献と文献に近似する現存美術作品からの探求―

研究の目的

(1)目的
平安時代の文学作品には、美術的な作品の記述がたくさん出てきます。屏風絵・歌絵・地獄絵・物語絵などの絵、州浜などの作り物、櫃などの調度品の模様、衣装の模様と様々です。それらは、物語に取り込まれ、歌に詠まれるなどして、文学に欠くべからざる存在です。また、当時の貴族社会にあっては、生活の一部でもありました。そのような文学と美術の関係を解明し、平安時代の文化のありようを浮き彫りにすることが、本研究の目的です。
(2)研究の基盤となる調査
その研究の基盤とすべく、下記の二つの調査を行います。
【調査1…文献に見られる美術作品の記述を収集し、コンピューターで整理。】
【調査2…屏風絵も含めて、平安期の美術作品はほとんど現存しない。平安期の絵をイメージする次善の方法として、正倉院御物や後世の美術作品から近似のものを主終始、コンピューターで整理。】

 

期待される研究成果

(1) 平安期の美術に関する資料集の作成
美術に関する文献での記述を収集整理して、資料集にまとめます。また、文献の記述を視覚的にとらえるために、現存する美術作品から近似する場面を求め、写真で確認できるようにします。このような資料集は、研究者だけでなく一般の人々にとっても、平安文化を理解する上で有効となるでしょう。
(2) 文学と美術についての総合的な考察
文献に見られる記述は、屏風絵が圧倒的に多い状況です。屏風歌については、すでに拙著『屏風歌の研究 論考篇・資料篇』(和泉書院 2007年 第九回紫式部学術賞受賞)において、資料収集とその研究を行いました。それと比較することで、用例の少ない他の美術作品のあり方を解明することができます。
たとえば、州浜という作り物を例にすると、文献には次のようなパターンが見出せます。
「川に千鳥の風景」(『宇津保物語』藤原君巻)
「海に海人の風景」(『同』祭使巻)
「松に鶴の風景」(『同』蔵開上巻)
これらと同じ構図は、屏風絵でも確認できます。屏風絵と比較することで、州浜に選ばれた構図が、屏風歌でも親しまれていたことがわかり、当時の文化的な志向だったことが判明するわけです。このように、屏風絵及びそれ以外の美術作品全般と、それに伴う文学を広く研究対象とし、美術の面から平安文化の意義を明らかにします。

 

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研究代表者氏名 中本 和彦
(ナカモト カズヒコ)
所属 教育学部
教育学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 23531225
研究課題名 新しい地理教育フレームワークに基づく地誌授業モデルの開発・検証

研究の目的

 本研究目的は,新学習指導要領中学校社会地理的分野,高等学校地理歴史科地理Bにおいて新たに導入された様々な地誌学習の授業化への当惑した問題状況を踏まえ,地誌学習を類型化している従来の枠組みを検討し,地誌学習も含めた地理の新たな地理教育フレームワークを考察,提案し,その枠組みを用いて実際の授業を類型化するとともに,それに基づいた現状の改善に資する地誌学習の授業モデルを開発して実践し,その実現可能性・有効性について検証することにある。

期待される研究成果

 本研究の期待される研究成果は,次の4点に要約することができる。
(1)新しい地理教育フレームワークによって,従来の様々な地理の授業を,授業レベルで統一的に類型化できる点。
(2)(1)によって,今日授業化に当惑している様々な地誌学習が,社会認識形成の面から統一的に説明される,という課題  解決的,学問的な意義を持つ点。
(3)新しい地理フレームワークに位置付いた地誌学習の授業モデルが,実践可能性のある,現状の課題を解決するものとし  て,具体的に開発,提示される点。
(4)(3)によって,研究と教育現場をつなぐ,教育実践的な意義を持つ点。

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研究代表者氏名 坂本 暁美
(サカモト アケミ)
所属 教育学部
教育学科
職位 准教授
研究種目 基盤研究(C) 研究課題番号 24501227
研究課題名 音楽科の学力を育成するためのデジタル教科書の在り方

研究の目的

 近年、デジタル教科書の研究が国家の重点課題に位置づけられ、すでに一部の学校で実証研究が始まっている。音楽科教育では知識・技能の習得が主たる目的ではなく、音に含まれるものを自分なりに意味づけし美的価値を見出す思考回路をつくることが目的である。音楽科の学力育成のためのデジタル教科書が存在していないという問題意識から、本研究では、デジタル教科書を「学力を高めるツール」の1つと捉え、①指導原理の提示、②活用方法、③教材としての在り方を提案する。

期待される研究成果

 これまで音楽科では、演奏の過程を聴き直すことの教育的意義は指摘されながら、学習者自身が日常的に容易にそれができる状況ではなかった。デジタル教科書活用により、例えば、自分の演奏過程を納得がいくまで聴き直して自己評価の質を高めたり、知覚・感受した内容を即時に電子黒板に投影して他の子どもと感じ方を比較したり、遠隔地の学校と授業を行って情報を交換することが可能となる。散発的なコンテンツ開発ではなく、学力育成のための指導原理から活用方法までを包含したデジタル教科書とその活用法の提示は、音楽科だけではなく他教科におけるデジタル教科書活用に新たなビジョンを開く意味で意義があると考える。

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